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これは、いかに早くシステムを開発し、多くの船社を取り込むかが、これからの利潤性の高い修理造船事業者の展望を開く分岐点とも言える。具体的に期待できる効果として次のようなものがある。

・定期的な整備範囲、故障カ所などを統計的に整理分析が可能となり、高度なノウハウを所有する修繕業が成立する

・仕事量が事前に把握しやすいことから、業務量の平準化が期待でき、従業員の計画的な配置、また休暇が取りやすい

・労働環境の悪いイメージから高度な情報産業に脱却できる

・造船業のみならず、発電所や製造メーカーの設備管理にも応用できるため、他分野への進出も可能となる

・その他、船舶の信頼性が向上し、乗組員の減少や高齢化にも有効である

これらの開発については、既に大手の外航分野において船陸間情報をベースとした船舶の運航管理のあり方について、「新しいフリーサポートシステムの調査研究報告書((社)日本造船研究協会、平成11年3月)」や「船舶の高度モニタリングの基礎調査報告書」があるが、これらの方策をより身近なものとするためには、更に調査研究を進めていくことが課題でもある。中小造船業にとっては取り組むのが難しい課題であるが、国や研究所が積極的に技術支援すべき、注目すべき技術課題である。

つまり、基本的な造船インフラ整備と需要の開拓として、コスト競争の泥沼から、体力を喪失する前に本来の技術先進国として取り組むべき課題であると言える。

 

※陸上支援船舶情報システム

船体内各所にセンサーを取り付け、そのモニター情報を通信衛星と結び、監視カメラと重要機器類のモニター情報が船社に提供され、これと同時に保守、保船契約している造船事業者に提供、そしてこれを分析することで、状況診断を行い、異常が有れば船社と協力して対応する。

 

4-1-4 人材の育成・融通

 

わが国の造船業は、経済の高度成長の中で、製鉄業とともに国の基幹産業として重要な役割を担ってきた。その当時、東京湾においては、大手造船事業者の主力工場が多数存在し、時代の先端であったマンモスタンカーを建造するなど、国内有数の造船先進地として活況を呈し、地域社会に安定した雇用を提供していた。

このような状況の中で、各大手造船事業者は、優秀な若年労働力の確保も容易で、事業者ごとの技能者育成制度により必要な人材を継続的に育成してきたが、その後、関東地区における産業の主力は、家電、自動車、情報機器などに変遷する中で、特に都市部にあっては、第3次産業の発展に押され、若年層の就職に対する選択肢も大きく変遷するに至った。

このような流れの中で、造船業は労働環境の悪いイメージも手伝って、若年層にとって職業としての魅力が少なくなり、また、東京湾内の大手造船事業者は生産規模の拡大を行うために、豊富で安価な労働力を求め生産の主力を西日本方面へシフトする結果となった。

 

 

 

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