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こうしたことから、生産性向上のための投資対効果が期待できる近代化投資や、若年従業員の継続的な技能育成、また待遇や労働環境の悪いイメージの改善などにつなげることが可能となる。

これらは、関東地区同業者間の生き残り方策であるとも言え、技術に裏打ちされた生産性の高い修繕業を本年7月1日施行の「中小企業経営革新支援法」などの公的支援を最大限に活用し、いち早く事業を再生することが市場を制することにもつながる。これは、将来にわたり魅力ある事業として東京湾内で稼働する船舶の整備などの使命を担っていけるもので、都市型造船業として、地域の海事関係者や首都圏の地域社会にとっても利害が一致する。

他方、関東地区の修繕業は、瀬戸内海などの西側内航船舶所有者から、東の整備拠点の1つとして一定の整備能力の確保が望まれている。これは、海難などによる緊急整備の必要性を意図したものであるが、同時に製品間のスワップに見られる海上貨物輸送構造の変革による物流コスト低減策を探求する荷主側の経営姿勢も見逃せない。

これについては、第2章で整理したとおり、幸いなことに、関東地区には他地域と比較しても相応の技術力を現に有している。また、東京湾が内航貨物輸送の貨物の積出港、もしくは最終荷揚げ地であることに着目した場合、近隣の造船事業者で整備した方が船舶所有者にとってメリットがあり、ここに内航船舶所有者のニーズに沿う市場性があると考えられる。

以上のことから、関東地区の修繕業は、需給のアンバランスなどの構造的な問題の解決に取り組み、一般的な内航船整備についての市場性を今後の経営戦略とした場合、魅力ある造船業の再生は可能であると考えられる。

なお、本件に関連して、後述の「4-1-5中小造船業の活性化策の検討」において最適な経営活性化策を検討した。

 

4-1-3 技術力(非価格競争力)の強化

 

造船業の経営においては、まず、生産性向上などによるコスト競争力の確保が必要となるが、これに加え、非価格競争力を維持することも今後の経営戦略として大変重要である。

新造船については、顧客の要望に合致する「企画・アイデア・創造性」などに位置づけられる市場性のある商品開発が求められ、一部の造船事業者は既にこれらに着目し、小型旅客船の分野で「多様な需要が存在する」、「情報に恵まれている」などの都市型造船業の特質を生かし、国内においても注目される地位を確保している。

非価格競争力は、上記以外にも船舶の安全な運航や定期的整備に係る作業性などにも大きく影響し、配管、電路などのぎ装や内装工事の確実性の良否も「信頼性・作業性・品質管理能力」という面で、商品の付加価値に影響を与える。

これらのことから、関東地区の造船業は、より非価格競争力に重点をおき、あわせて総合的な技術力を維持、発展させることが重要である。

他方、船舶の修繕分野においても、将来の修理造船事業者の展望として、同様の競争力を確保することが重要である。

これは仮に、一般的なコスト競争力に若干問題があったとしても、これを補完するに十分な効果が期待できるものである。具体的には、造船事業者による船社工務部門のアウトソーシング化にあるが、これは船舶個々の状況を把握するカルテを作成し、保守保船管理契約を結び、入札においても提案型の仕様書作成を行い、船舶所有者にメリットが期待できる方法を追求することにある。このため、船舶の陸上支援や船舶情報システムの開発の動向に注目する必要がある。

 

 

 

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