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したがって、その原因を究明するための対象として、引き船の建造造船事業者に焦点を絞り、同種の関西地区造船事業者との具体的なコスト比較や生産性の相異について比較検討を試みた。

しかしながら、結果としては、企業側の経営上の理由により全面的な協力は得られず、関東地区に比べ契約船価が1〜2パーセント(500〜1,000万円)割高であることが判明したのみで、生産性や生産コストに係る相異点などについては把握できなかった。

そこで、改めて関東地区及び関西地区で建造した船舶を所有する船社の工務部門に対しヒアリングを行い、相違点を次のとおり推察、整理した。

 

表4-1-1 関東地区と関西地区の比較

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これらのことから、関東地区同業4社の競争力は生産性、資機材の調達の面で相応のハンディを余儀なくされている。この状況を放置しては今後の展望が開かれないが、仮に、近在する同業4社の所有する造船施設の優位性や人的資源の効果的な共有・活用が可能となれば、引き船の連続建造が可能となり、生産性の改善や資機材調達価格のハンディの低減効果も期待できると考えられる。

その結果、関西地区とのコスト競争力が維持されることにもなり、またこれらの船舶は造船事業者近隣の海域で稼働するものも多く、船社にとっても以後の整備の面でお互いがメリットを共有することにもなる。

以上のことについて、既に同業4社は危機意識を共有しているため、コスト競争力の改善を目的として後述の「4-1-5 中小造船業の活性化策の検討」において、各社の経営資源や経営の状況を精査・勘案し、最適な方策を検討した。

 

(2) 修繕船

 

修繕業については、東京湾内で稼働する船舶の大半は平水船舶であることから、その定期的な整備は地元の造船事業者で行われている。このようにみると、地域依存型の修繕業で、他地域との競争は基本的にないと言える。問題となるのは、関東地区在籍船の減少に見合った修繕業の需給バランスが確保されていないことにある。

これは、仕事の取り合いで請負単価の叩き合いから業況が悪化して事業がより零細化することや、更に現業従業員の高齢化などによって、今後の事業継承も危ぶまれる状況になっており、その将来性に明るい兆しは見えない。

このため、事業の集約、協業化などにより、互いに所有する経営資源の集約や効果的な活用を図ることで、仕事量に見合った需給バランスを確保することが重要である。

 

 

 

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