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第4章 ビジョン達成方策の検討

 

本章では、第3章において検討した関東地区の地域ビジョンの骨子に基づき、以下の項目を関東地区の地域ビジョンの柱として抽出し、その具体策について検討した。

(1) 近代化・合理化の推進

(2) 造船・舶用工業技術情報支援センター構想の実現

(3) 新規需要の開拓

以下、それぞれの項目についての検討結果を記す。

 

4-1 近代化・合理化の推進

 

4-1-1 背景

 

東京湾を中心とした関東地区には、約200隻の官公庁船を含め、約1,700隻の各種、多様な船舶が湾内の物流、防災、あるいは外航出入港船のサポート役として稼働している。これらの船舶のうち、新造にあってはその約4割が、修繕にいたってはその大半が地元の造船事業者で整備されている。

このようにみると、関東地区中小造船業は、瀬戸内海などの内航船の大生産地と違い、地元依存度が極めて大きく、特殊な船舶の建造と地元船の修理に特化した業界と言える。

また、東京湾内に多く立地する関東地区の中小造船業は、地域間の物流を始めわが国屈指の重要港湾で活躍する多くの船舶の整備や、臨海部産業を支援する担い手としての重要な役割と使命がある。

しかし、バブル経済が崩壊し景気の低迷が長期化する中で、その業況は遠洋漁業の不振や海上貨物輸送構造の変革による内航海運の不振などの外的要因による影響に加え、内部的には造船業需給のアンバランスによる事業の採算性問題、熟練労働力の高齢化、若年労働力不足により、技術や事業の継承が危惧されるなど、様々な問題を抱えている。

これらの点を踏まえ、本節では都市型造船業のこれら課題の解決方策を検討し、あわせて一般内航船の一部についても、瀬戸内海等内航船舶所有者が期待する東の整備拠点と成り得る造船業の構築を目途とした、近代化・合理化方策のあり方を検討した。

 

4-1-2 瀬戸内海等造船集積地域との競争力の確保

 

(1) 新造船

 

関東地区は、瀬戸内海地区と比べ資材調達や人件費などの面で高コストになるというハンディから、一般的な内航船の建造は競争力が弱く、また関東地区にはこの種の船舶が建造できる施設はほとんどなくなり、将来性に乏しい状況である。

しかし、「多様な需要が存在する」、「情報に恵まれている」などの都市型造船業の特質を生かし、付加価値の高い官公庁船や小型旅客船などの分野に特化した造船業は、一定の競争力を維持していると考えられる。

特に、引き船については、従来、国内建造隻数の約4割のシェアを関東地区の同業4社が確保してきたが、近年ではその地位が危ぶまれている。これは、地域ビジョンが目標とする「関東地区においては今後とも付加価値の高い船舶の建造能力を養い、このための造船能力の伝承、発展を図る」という方向性に反する状況であるといえる。

 

 

 

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