日本財団 図書館


第3章 関東地区中小造船・舶用工業の課題と地域ビジョンの骨子

 

ここでは、第2章でとりまとめた関東地区の中小造船・舶用工業の現状をもとに、本年度実施した関東地区中小造船・舶用工業の地域ビジョン策定に関するアンケート結果を踏まえて、その課題を明らかにする。

 

3-1 関東地区の抱える課題と解決策

 

(1) 特化分野における造船技術の伝承・発展、競争力の強化

 

関東地区における中小造船業(建造)は、特化している官公庁船、小型旅客船、作業船等の建造能力を生かし、今後も造船技術の伝承・発展を図っていく必要がある。

また、他地区に比べ地価や人件費の面で不利になる場合もあるが、各種船舶の集積地であり、「多様な需要が存在する」ことや「情報に恵まれている」ことなどの特性を生かし、付加価値の高い船舶の建造能力を培い競争力を確保することも重要である。

そのためには、引き続き特定の船種に特化した建造能力を確保し、業界内で競争力の強化を図るための努力を継続する。

他方、特定の船種ではなくとも、特定の技術分野において独自の技術を開発するなど、他社、他地区にはない技術の蓄積を図ることも必要である。

そのためには、対象分野や技術開発の目的等を明確にし、常にその目的の実現に向けた取り組みが必要である。

 

○ 課題解決に有効と思われる具体策の例

 

1]人材バンクの設立による人材の確保・融通・育成

2]コスト高となる技術レベルの高い船舶の建造を支援するための公的支援の強化

3]新規需要の創出

・首都圏における大型海洋プロジェクトの調査

・観光船業をターゲットとした新規事業の開拓(例: 海底遊覧、湾岸遊覧等)

・河川を活用したモーダルシフトの検討

 

(2) 生産性の高い修繕能力の確保

 

中小造船業(修繕)については、関東地区が首都圏の物流を支える内航貨物船、東京湾内で稼働する小型の旅客船や作業船、官公庁船等の各種船舶の集積地であることから、引き続きこれら船舶の保守・整備を担うという社会的使命がある。

このため、経営を圧迫しない範囲内で設備の近代化・合理化等に積極的に取り組み、生産性の高い修繕能力の確保を図ることが必要である。

 

○ 課題解決に有効と思われる具体策の例

 

1]経営改善方策の検討

・合理化、集約化、協業化、共同設備投資等

・船種ごとの特化による造船業の高度化

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION