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2-2-6 関東地区中小造船業の特徴と問題点

 

(1) 特 徴

 

関東地区中小造船事業者は、非常に零細で経営基盤の弱い事業者が大半を占めており、西日本地区における小手造船事業所と位置づけられるものがほとんどである。このため、西日本地区でみられる大手と中小手の連携した事業展開が成立しにくい状況にある。

建造分野においては、貨物船、タンカー等の内航船の建造比率は非常に低いが、人件費、資機材の調達などの面でコスト高になるハンディのある状況の中で、「多様な需要」「恵まれた情報」などの地理的な特質を活かし、付加価値の高い官公庁船、小型旅客船及び作業船等の船種に特化した船舶の建造を行い、競争力を確保している。

なお、船種の特化により設計・企画の効率化、技術の向上などは図られているが、資機材の調達などに関するメリットは、建造隻数が少ないため、あまり効果が上がっていないと言える。

修繕分野においても、首都圏を支える内航貨物船、東京湾内で稼働する官公庁船、小型旅客船及び作業船等の大多数を整備し、新造船部門とともに地元依存度が極めて高いと言える。

 

(2) 問題点

 

1) 近年、従業員の高齢化による後継者不足が深刻な問題となるとともに、かつての労働環境の悪いイメージから、若年労働者の確保が進まない状況に陥っている。このため、高齢化対策、技術の伝承、後継者育成に関して、具体的な検討が必要である。

特に、現業部門の特殊技能工は、機関の仕上工、管ぎ装工、現図工等の人材育成が重要な問題になっている。

2) 中小造船事業者の多くは、機関整備や船舶電装事業者等の協力がなければ事業は成りたたない状況である。このため、これら技能工の有効活用のあり方を追求するとともに、社会的地位の向上を図り、若年層の人材確保への取り組みが必要である。

3) 舶用機器類は、高性能化・ハイテク化しており、これに十分に対応できるよう先端技術情報の収集や高度な整備技量の修得に努める必要がある。

4) 生産設備については、西日本地区との比較や今後のモーダルシフトの動向を考えた場合、生産設備の老朽化や近代化・合理化への対応があまり行われていない。このため、老朽化した生産設備の近代化・合理化等を通じて、高い生産能力の確保を図る必要がある。

5) 中小造船事業者は専業度が非常に高く、生産・経営規模も小さいことから経営基盤が弱い。このため、新規需要の創出や大都市という地理的優位性及び海浜部の経営資源を有効に活用した新規事業分野への進出などを行い、経営基盤の強化を図る必要がある。

6) 関東地区、特に東京湾周辺の中小造船事業者は、京浜港・千葉港といったわが国有数の港湾を背景として、多種多様な海事産業のニーズの恩恵を享受できる、恵まれた状況にある。しかし、修繕業においてはコスト高、ドック期間の長さを指摘され、海難時を除き西日本内航所有者の90%の船舶が中小造船事業所を利用していないという大きな問題が明らかとなった。このため、コスト問題やドック期間の長さの解決を非価格競争力や生産性向上で乗り切り、これらの膨大なマーケットの取り込みに力を注ぐ必要がある。

 

 

 

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