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次節でも触れられているが、わが国造船業の問題点は、やはり付加価値の低さに問題があり、建造量の割に収益が少ない構造的欠陥がある。このため、三菱重工業等がタンカー建造から撤退し、旅客船やガス船、コンテナ船市場に進出した他、メガフロートやTSL等の高付加価値の船を建造しようという気運にある。

この間の、生産性向上のためにコンピュータ導入が積極的に行われたが、その内容は以下のとおりである。

1]コンピュータによる工程管理、設計への活用(CAD)、建造への活用(CAM)

2]コンピュータの統合的活用として受注から設計建造まで処理するCIMSの導入

3]高度な情報化処理技術である知識共有型情報システム(CALS、LINKS)の開発計画

そして、以上のような内容の基調講演の最後に、今後のわが国造船業の展望として、『世界一といっても単なる造船量のシェアでなく、付加価値の高い船や、ソフトや技術の有償供与等の付加価値を含めた売上高世界一を目指すべきである』と結んでいる。また、技術の伝承については、『若い優秀な技術者を惹きつけるような魅力的な造船業になれ』と指摘している。

本ビジョンにおいても、以上のような視点を持って現状について考察して行くべきものと考える。

 

2-1-2 マクロ経済の歩み 〜その一考察〜

次に、経済のマクロ的視点について考えてみる。

わが国の経済状況は、現在非常に厳しいものとなっている。中小企業の多い造船・舶用工業の業界の中には、景気の回復を第一にかつての好況時の再訪を心待ちにすると言う状況にある。

しかし、今年の日本経済新聞に掲載された日本経済研究センター香西会長の主張は、このような現状を否定するもので、非常に示唆に富む内容であった。その内容を概括すると以下のようになる。

1950〜75年(高度経済成長期)の実質経済成長率は8.6%であったが、1975〜2000年までは3.0%に低下している。(図2-1-5)

 

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図2-1-5 実質GDP成長率と円ドル相場の推移

出典:野村証券レポート新年号

 

 

 

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