結果は良悪性両群間に有意差を認め、有用なパラメータと考えられた。
dsD/dmeanは、腫瘍重心点から表面までの距離の標準偏差を平均距離で除したいわゆる変動係数で、ばらつきを比較する際に有用と考えられる。悪性腫瘍で大きい値を示すと考えられたが、今回の結果からは両群間に有意差は認めなかった。
dmax3/Vは腫瘍の一部に突出するいびつな部分があれば大きい値を示し、dmin3/Vは切れ込みやくびれがあれば小さい値を示すと考えられたが、両者とも有意差は認めず、これは必ずしも悪性腫瘍すべてが極端にいびつな形や切れ込みを有していないためではないかと思われた。
歪度や尖度は、腫瘍重心点から表面までの距離のヒストグラムを作成した時に、その分布の全体的特性を表す値である。Dskewは、腫瘍重心点から表面までの距離の平均値以下と平均値以上の分布の対称度を表し、平均値を中心に対称的に分布している場合は0に、分布のすそが左側に延びている場合は0以下のマイナスの値に、分布のすそが右側に延びている場合は0以上のプラスの値になる。ここでは対称的に分布しているか、そうでないかだけの区別が必要でありその絶対値で検討した。結果は、両群間に有意差は認めなかった。一方Dkurtは、腫瘍重心点から表面までの距離の分布におけるすその広がり具合を表し、正規分布している場合は0になり、全体的に広く分布し平らに近づけばマイナスの値になり、中心部分に集中し分布の広がりが小さく両端部分が少ない場合にプラスの値をとる。結果は、両群間に有意差は認めず、良悪性判別にDskew、Dkurtは有用でないと考えられた。
E. 良悪性判定式とその評価
1. 良悪性判定式P(悪性である確率)の作成
一つのパラメータによる良悪性判別は、良性群と悪性群とで重複する部分が多く、具体的数値基準の設定などによる方法は難しいと思われた。そこで有用な複数のパラメータを選び出し、それぞれの特性を生かしながら、パラメータ間の偏りを補正する目的で多変量解析による手法を用いた。またわれわれが最終的に必要とする判別結果は、良性または悪性の2つであり、上限・下限の存在しない一次関数を用いた重回帰分析や判別分析は適当でなく、結果が0から1までの値で表示されるロジステイック回帰分析を用いて解析した。