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C. 腫瘍の輪郭抽出と三次元表示について

本システムによる腫瘍領域の三次元画像抽出は、まず各ボクセル周囲の輝度情報を参照にしながら、ファジィ・ルールによって各ボクセルの"腫瘍(=低い輝度)"、"正常組織(=高い輝度)"、とその"境界"の3つのグレードを表わす画像を作成する。弛緩法に基づき論理的な矛盾を解決するために往復処理を行い、すべてのボクセルデータを先の3つに分類し腫瘍領域を抽出する。この抽出された各断層画面を再構築し、サーフェイスレンダリングによる陰影法を用いて三次元表示した。

 

D. 良悪性判別のパラメータについて

通常のBモード画像において良悪性の判定に頻用される定量的パラメータに縦横比Depth-Width ratio(D/W)12)があり、その有用性については多数の報告がある13)〜17)。そこで今回は、本システムによりこのD/Wを三次元画像から算出し(3D-D/W)、良悪性判別のパラメータの1つとして検討した。その結果18)、良悪性両群間に有意差を認め、有用なパラメータであることが示唆された。

良悪性判別の指標として、縦横比以外にも形状(円形、分葉状など)や辺縁の性状(平滑、不整など)により判断することがあるが、これは定量的なものではなく客観的でない欠点を有する。一般に乳腺の良性疾患は形状的には整(円形、楕円形など)で辺縁平滑なものが多く、癌などの悪性腫瘍では不整形で辺縁粗雑なものが多い12)16)17)。このような特徴を勘案し、更に以下のような独自のパラメータを考案し、良悪性両群間で比較検討した。

S/Vindex19)は腫瘍の表面積Sと体積Vの比を用いたパラメータで、これは球型で正規化した場合S/Vindex=S3/36πV2と定義され、完全な球形では1になり、表面が凹凸不整になると体積に比して表面積が大きくなるため1より大きい値となる。よって縦横比が同じであっても、表面不整な悪性腫瘍ではS/Vindexが大きい値を、表面整な良性疾患ではより小さい値をとることが推察される18)〜21)。結果は良悪性両群間に有意差を認め、有用なパラメータであることが示された。

Sz/SxyやM-Dにおいても、良悪性両群間に有意差を認め、有用なパラメータと考えられた。

Vei/Vは腫瘍に内接する楕円体体積を腫瘍体積で除したもので、これは表面平滑な球または楕円体を基準とした時に、それよりどの程度の比率で凹凸不整が認められるかを表した指標と考えられる。それゆえ凹凸不整が少なく、球または楕円体をしていることの多い良性腫瘍では1に近い値を示し、悪性腫瘍では表面がデコボコしているため内接する楕円体は小さなものになってしまい1より小さい値になると考えられた。

 

 

 

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