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しかしながら概して日本人は乳房が小さく、そのためマンモグラフィは不向きで、しかも被爆の問題が絶えず付きまとう。

一方超音波画像を用いた研究は、久保田ら10)や長澤ら11)が二次元超音波画像を用いた定量的診断法について報告している。これは検者が選んだ任意の一断面に関する形状特性や内部エコーなどを利用した多数のパラメータによるものであり、短時間で解析できる利点があるものの、設定された断面によりデータ上のばらつきが生じる可能性がある。

本研究は、乳腺腫瘍を超音波画像を用いて三次元的に抽出しコンピュータを利用して、良悪性の判定を行なうことを目的としたものである。判定を行なう画像はある任意の一断面ではなく、腫瘍全体を立体的に抽出して解析するため、データは客観的で一定である利点を有する。例えば三次元画像から最大断面を特定したり、腫瘍の重心点から表面までの最小・最大距離の正確な計算や微細な表面構造の把握分析など、より的確な定量診断が可能になると考えられる。しかし三次元画像抽出というやや複雑なプログラム操作を必要とし、そのため解析に要する時間は長くなりリアルタイム性に欠けるという問題がある。もし解析時間の短縮化などの改善が図られれば、地域住民を対象にした乳癌の集団検診が効率的に行われるようになり、視診触診だけの検診から超音波検査による検診へと変化し、全国的に普及すると思われる。

ところで、対象とする症例は各地域の集団検診などで収集することが望ましいが、統計的処理や判定結果の検証のためには、良悪性の区別がはっきりしていなければならず、そのため今回は病理組織診断のついている本学附属病院超音波検査室での症例を用いた。

 

B. 三次元座標変換の精度について

本研究では位置や方向の情報を得るために、交流磁界を利用したFastraktracking systemを使用している。同システムのマニュアルに記載してあるデータによると、交流磁界を発するトランスミッタと磁界を感知するセンサとの間の距離が76cm以内にあれば、X・Y・Z三方向におけるセンサの位置誤差±0.08cm、位置分解能0.0005cm、角度誤差±0.15°、角度分解能0.025゜であり、通常誤差範囲内で測定されており約±0.08cmの精度で腫瘍領域の抽出が可能と考えられる。よって超音波装置の分解能を考えても今回計測されたデータは十分精度の高いものと言える。

 

 

 

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