V. 考察
A. 乳癌検診について
乳癌は従来欧米に多いとされていたが、近年食生活の変化などの影響もあり日本における発生率は年々増加傾向にある。それに伴い早期発見の重要性がにわかにクローズアップされ、沖縄の離島から北海道の寒冷地に至る日本全国各地で集団検診が盛んに行われてきている。しかしながらその検診方法は現在主に視診触診法であり、検者である医師の経験や技量に左右されることもあるが、非触知の小さな腫瘍に関しては見逃されている可能性は否定できない。そこで一部の地域では、超音波画像やマンモグラフィを併用した検診が行われるようになってきたが、いずれの検査においても収集する情報量が膨大であり、しかもそれを読影する医師の負担は大きいという課題を抱えている。そこでこれらの多くの画像を一度に収集し、その読影や判定までを短時間・効率的にこなすことができれば、これらを用いた検診が普及すると思われる。最近、コンピュータを利用して画像処理や診断を行なうコンピュータ支援診断CAD(Computer-aided diagnosis)の研究が行なわれるようになってきた。
乳腺腫瘍のマンモグラフィを用いたCADの研究は、米国の土井らが既に報告8)9)している。これはコンピュータを用いて微小石灰化のクラスターや腫瘤などを検出し、それらの良悪性に関するパラメータをもとに診断支援を行うものである。