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初発欝血性心不全患者の基礎心疾患としての心筋症の検討では、いずれの地域でも大半の心筋症は、拡張型心筋症であった。従って本来頻度がずっと高い肥大型心筋症は(13)、初発欝血性心不全の原因疾患としては関与が低いと考えられた。

弁膜症についてみると、高齢者の初発欝血性心不全の基礎心疾患として弁膜症が多かったが、特にリューマチ性弁膜症がこれに強く関わっているという訳ではなかった。カラードップラー法で調べた弁逆流を見ると、山間部では、明らかに他の二つの地域に比較して弁逆流の程度が強い傾向が認められる。高齢者に認められる、必ずしも原因のはっきりしない各弁の逆流で程度の強いものが、心不全発症に関与している可能性がある。

不整脈と心不全発症の関係をみると、初発欝血性心不全時の基本調律は、各地域ともに洞調律が70%前後で第1位であり、続いて心房細動が30%前後で第2位であった。これは65歳以上の心房細動を有する率が女性で4.8%、男性で6.2%という報告(14)と比較すると、心房細動が原因であれ結果であれ強い関係があることは否定できない。心不全の原因、あるいは合併症として心房細動は重要な要因とされるが、心房細動は全体では60歳代に最も高率に認められるが、地域別では山間部において高齢者に高率である傾向が認められた。また心房細動症例がどのような基礎心疾患に合併したかを調べると、全体では弁膜症、心筋症、高血圧性心疾患、虚血性心疾患の順に高頻度に認められた。心房細動は心房に負荷が長期間にわたってかかるような弁膜症により高頻度に合併する傾向があり、弁膜症、心筋症等の慢性型の基礎心疾患に心房細動合併率が高いと考えられた。地域別にみても、いずれの地域でも心房細動は弁膜症に最も高率に合併した。

心エコーで心機能の指標を調べたところ、駆出率、左室拡張末期径、左室収縮末期径、心室中隔壁厚、左室後壁厚では地域別の差はなかったが、左心房径のみが、唯一都市部で有意に低めであった。相関を調べても、年令と左房径は特に有意の相関はないため、年令の問題というより、都市部で他の地域に比べて弁膜症が少ないことが関連していると考えられた。初発欝血性心不全時の年令と、心機能の指標の関係では、全体では左室拡張末期径、左室収縮末期径は年令と負の相関があり、また地域別で見ると都市部において、左室拡張末期径、左室収縮末期径、心室中隔壁厚、左室後壁厚は年令と負の相関を示した。

 

 

 

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