心房細動を年齢別に見ると全施設では80歳代に最も高率に認められた。地域別では、心房細動は沿岸部では60歳代(57%)、都市部では50歳代(32%)に最も高率に認められたが、山間部では80歳代(50%)に最も高率に認められ、次に90歳代(43%)において高率であった。
心房細動症例がどのような基礎心疾患に合併したかを調べると、全体では弁膜症(44%(55/126))、心筋症(33%(20/60))、高血圧性心疾患(25%(21/85)、虚血性心疾患(13%(29/220))の順に高頻度に認められた。弁膜症、心筋症等の慢性型の基礎心疾患に心房細動合併率が高かった。地域別にみても、いずれの地域でも心房細動は弁膜症に最も高率に合併した(表-7)。
さらに心エコーで駆出率、左室拡張末期径、左室収縮末期径、心室中隔壁厚、左室後壁厚、左心房径を心機能の指標として各地域で比較したところ、唯一都市部で左心房径が小であった(表-8)。
また、カラードップラー法で調べた各弁の逆流に関しては、いずれの弁の逆流も山間部で程度の強いものが多かった(表-9)。心機能と年令の関係を調べたところ、全体では高齢になるほど左室拡張末期径と左室収縮末期径が小さくなるという、有意の負の相関関係が認められた(図-4)。さらに各地域別に見ると都市部では、左室拡張末期径、左室収縮末期径、心室中隔壁厚、左室後壁厚が年令と負の相関が認められた。しかし、症例数が少ないためと考えられるが、山間部、沿岸部では有意な相関関係は認められなかった(図-5)。さらに、左室拡張能の指標として心エコーで左室流入期におけるE/A比を調べたが、年齢とともに左室拡張能が低下していく傾向が認められた。
IV. 考按
初発欝血性心不全患者の背景因子に関しては、初発欝血性心不全患者の各地域別の年齢が、山間部、沿岸部、都市部の順に高く、特に山間部、沿岸部の初発欝血性心不全患者の年齢が有意に高かった。性別で見ると、我々の以前の報告と同様に(9)、いずれの地域でも女性の欝血性心不全初発時の年令は、男性より有意に高い。また男性の間では、各地域で初発欝血性心不全発症時の年齢に差が少なく、女性の欝血性心不全発症時の年令が山間部、沿岸部が都市部に比して有意に高かった。以上のことから、山間部、沿岸部の女性の初発欝血性心不全が他に比べて高齢で発症していることは特徴的で、年令と性別から見た初発欝血性心不全の一つの特徴としてとらえることができる。
全体の初発欝血性心不全患者の基礎心疾患別の年齢を見ると、我々の以前の報告と同様(10)に虚血性心疾患、弁膜症、高血圧性心疾患、心筋症の順であった。