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その他に、性別で初発欝血性心不全患者の基礎心疾患を比較すると、いずれの基礎心疾患においても、初発欝血性心不全時の年令は女性が男性より高齢であった。その他の、特徴として、高血圧性心疾患症例では、いずれの地域においても女性と男性の年齢差が大きかった。また、心筋症例による初発欝血性心不全は山間部、都市部で最も若年で発症しているが、沿岸部のみでは高血圧性心疾患、虚血性心疾患より高齢であった。

初発欝血性心不全患者の基礎心疾患を見ると、基本的には虚血性心疾患、弁膜症、高血圧性心疾患、心筋症の順であった。しかし地域別に見た場合、山間部のみで虚血性心疾患、弁膜症が同率で1位であった。さらに山間部の性別の初発欝血性心不全患者の基礎心疾患を見ると、山間部の女性の弁膜症の比率が極めて高く、山間部男性では弁膜症が特に高率であるということはなかった(図-3)。

弁膜症はリューマチ性弁膜症と、それ以外の非リューマチ性弁膜症に分けて検討したが、これらの比較では、各地域別、更に性別に分けても弁膜症による初発欝血性心不全の多かった山間部、あるいは、山間部女性に特にリューマチ性弁膜症が多いという訳ではなかった(表-4)。

初発欝血性心不全患者の基礎心疾患のなかで、まず虚血性心疾患については、陳旧性心筋梗塞に伴うものが、山間部、沿岸部、都市部ではいずれも20%台で差はなかったが、急性心筋梗塞に伴うものは、37%、61%、67%と山間部で急性心筋梗塞による初発欝血性心不全が低率になっていた。しかし陳旧性心筋梗塞を有するものに急性心筋梗塞が生じて欝血性心不全を生じたものを見ると31%、6%、15%と山間部で高率であり、急性心筋梗塞が直接の原因となっているものは各々68%、67%、77%といずれの地域でも最も高率であった。冠動脈病変枝数では山間部、沿岸部、都市部で1.3±0.5本、1.4±0.9本、1.6±0.9本であり、差はなかった(表-5)。

欝血性心不全の基礎心疾患としての心筋症については、都市部において、拡張型心筋症が85%(66/78)、肥大型心筋症が15%(12/78)であった。しかし症例数が少ないためか、山間部(6例)、沿岸部(4例)は全て拡張型心筋症であった。

初発欝血性心不全時の基本調律は山間部、沿岸部、都市部で各々洞調律が、65%(35/54)、65%(24/37)、76%(327/433)であり、心房細動が35%(19/54)、30%(11/37)、24%(102/433)であったが、有意差はなかった。その他に完全房室ブロック、ペースメーカーリズム等が少数認められた(表-6)。

 

 

 

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