D 定義
鬱血性心不全の定義は基本的にはFramingham criteria(8)に従ったが、胸部X線写真で肺鬱血を確認されるものとした。明らかに腎不全等の腎疾患、肺炎などの呼吸器疾患等、心臓以外の疾患による肺鬱血は除外した。さらに小児の欝血性心不全は対象外とした。
III. 結果
患者背景因子を表1に示す。初発欝血性心不全患者は、山間部54例、沿岸部37例、都市部433例で、総数は524例であった。欝血性心不全初発時年齢は山間部で有意に高く、続いて沿岸部、都市部であった。また性で分けた発症率では都市部では男性が女性に比して高率であったが、沿岸部、山間部では女性が高率であった。その他に糖尿病の合併頻度が沿岸部で有意に高率であったが、高血圧、高脂血症、腎機能には差を認めなかった。
世代別(10年毎)にみた各地域の初発鬱血性心不全の発生頻度は都市部で70歳代が最も高頻度であったが山間部、沿岸部では80歳代が最も高頻度であった。しかし、性別で見ると、山間部、沿岸部の男性は60歳代が最も高頻度で、都市部の男性は70歳代が最も高頻度であった。女性では都市部では70歳代が最も高頻度であり、山間部、沿岸部の女性は80歳代が最も高頻度であった(図-1)。
性別から見た初発鬱血性心不全の平均年齢は、男性では、各地域で有意差はなかった。しかし女性では山間部女性80±8歳、沿岸部女性79±9歳、都市部女性74±10歳と有意に山間部、沿岸部で女性が高齢であった(表-2)。
次に、図-2に示したように、全体の初発欝血性心不全患者の基礎心疾患を年令から見ると、基礎心疾患が原因不明であるものの年令が最も高く、続いて、弁膜症、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、その他の心疾患、心筋症の順になった。
表-3に示したように、基礎心疾患別の初発欝血性心不全時の年齢を地域別に比較すると、山間部では弁膜症、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心筋症の順であった。沿岸部では弁膜症、心筋症、虚血性心疾患、高血圧性心疾患であった。また都市部では、虚血性心疾患と弁膜症が同年齢であり、続いて高血圧性心疾患、心筋症の順であった。特に弁膜症においては、山間部、沿岸部において都市部に比し、極めて高齢であり、しかも弁膜症の男性は各地域で年令に差がなかったが、女性は山間部、沿岸部で特に高齢であった。その他に、性別で初発欝血性心不全患者の基礎心疾患を比較すると、いずれの基礎心疾患におい差がなかったが、女性は山間部、沿岸部で特に高齢であった。