花粉量をのぞいては、一般的には都市化が問題になっているが、大気汚染(13、14)や室内環境(15)がいわれているものの、その程度は定量的に示されていない。本研究ではスギ花粉の飛散量という交絡因子を考慮せず、単変量解析を行ったところ、明らかな危険要因を見いだせなかった。多変量解析で、鉄筋コンクリート造りが木造・モルタル造りに比べて母父ともオッズ比が1より大きく有意確率5%で有意であったものの、地域に限って層別解析をおこなった場合、明らかな傾向は見られなかったことから、大気汚染や室内環境は花粉曝露量に比べ、大きな影響にはならないのではないかと推察された。
一方遺伝要因については、どのアレルギー疾患も1より大きなオッズ比が得られ、従来の研究と一致していた。インフォメーション・バイアスを考慮しても、強い影響であり地域を限った層別解析においても同様な結果を得られ、環境要因(大気汚染や室内環境)より強い関連が示唆された。しかし、環境因子の研究は同じ曝露量の地域である場合、重要となってくるので、今後さらなる解明が必要である。
V. 結論
全国10府県60市町村で実施された3歳児健康診査受診者の両親を対象としてかぜをひいていないのに出現する症状の頻度や分布、スギ花粉症の有病率、また、スギ花粉症の危険因子を定量的に分析し以下の結果を得た。
1. かぜをひいていないのにくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状、眼のかゆみなどがでる者は母33.3%、父30.8%であった。多くの者は多少気になるが大きな影響はないと答えたが、有症者の母9.0%、父7.9%は仕事が手につかないくらいの影響があると答えた。府県別に症状の出現する月を観察した結果、春で3月4月、秋では9月10月にピークがあった。春の方が秋より大きなピークであった。有症者のうち、毎年おこる者の割合は6〜7割程度であり、明らかな地域差は認められなかった。
2. スギ花粉症を定義し、有病率を求めた結果母252人(6.5%)、父179人(4.8%)であった。母が父に比べて高く、30〜34歳で最も高かった。府県別では、静岡が高く、鹿児島、岡山が低かった。花粉飛散量が多い関東・東海地域が高く、少ない地域では低い傾向が見られた。スギ花粉症ありの者で、症状の出現頻度を観察した結果、眼のかゆみを訴える者が高かった。仕事が手につかないくらいの影響があるとした者は母で21.8%、父では21.3%であった。毎年のようにおこる者は母80.9%、父86.5%であった。月別では母父とも春の他に秋にも小さなピークが観察され、母が父より早くピークを迎える傾向が見られた。