本研究ではアレルギー学会(7)が定義する3主徴をすべて満たし、2月から5月のいずれかの月に症状出現するとした者としたが、今後さらに感度・特異度の分析がすすめば、症状の項目別データを処理することによって、より近い有病率を示すことができるであろう。
かぜをひいていないのにたびたびくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状、眼のかゆみなどがある有症状者の中で、どの府県においても月別頻度を観察すると春と秋にピークが見られたことは、日本全国スギ・ヒノキなどの春先におこる花粉症とイネ科、ブタクサ・ヨモギなどの秋におこる花粉症があることが考えられる。また、対象をスギ花粉症に限って観察した場合でも秋にピークがみられ、スギと交差して草の花粉による花粉症があることが考えられた。全国的に有名なスギ花粉は毎年その季節になるとマスコミから情報が流れ多くの人が情報を得ている。しかし、スギだけでなくヒノキ、イネ科の植物やブタクサ・ヨモギなど花粉症をおこす植物も存在し、その花粉量は季節や地域によってさまざまである。また、地域独特の花粉症である兵庫のオオバヤシャブシ(ハンノキ族)や四国地方のオリーブ花粉症などが報告がされている(8、9)。
スギ花粉症ありの者の中で毎年繰り返す者が約8割おり、仕事が手につかないくらい影響する者は2割を超えた。これは、働き盛りとされる20歳代、30歳代の社会的損失とも考えられ、公衆衛生の問題として対策を講じる必要がある。
母が父より症状の頻度が高いことは、3歳児に同伴する保護者はほとんどが母親であることから、記入者である母親のほうが直接聞きながら記入される父親より情報が多く得られた可能性がある。しかし、女性に高い頻度であること、30〜34歳が多いことなどは先行研究に一致している。性差や発症年齢など今後多方面からの研究が求められる。
また、地域差については花粉飛散量(10)と関係して東海地方に多く、スギの少ない地域は少ない傾向が見られた。大阪府は比較的高い有病率であったが、大阪府のスギ植林面積は他県に比べて非常に少ない。しかし、花粉量は必ずしもスギ林の面積に一致しないので、実際の花粉量が多い可能性は否定できないが、有病率の高いことは都市化が影響している可能性もある。
遺伝要因については、遺伝子レベルで研究が進んでいる(11、12)が、発症をすべて説明できない。発症には、遺伝素因だけではなく環境要因も複雑に関与していると考えられる。特に花粉曝露量は大きく関与しているが、正確に個人レベルで花粉曝露量を測定することは困難であり、不可能である。