5、 まとめ
質的に分析、系図化することで高齢者のウオンツ(高齢者を中心とした住民のサービスに対するニーズ)として以下のカテゴリーが存在することが実証された。(詳細は本文、系図参照)
(1) 高齢者が生活しやすい環境:1]理解できる手段で、必要な所に提供される情報、2]-1. 自立と社会化を促す歩ける環境・歩ける道路、2]-2. コミュニケーションと社会参加の場づくり、2]-3. 高齢者の身体機能を意識した交通手段の充実、3]知識にも裏付けられた住民の暖かいまなざし、4]“現実と希望の在宅生活”の充実と“保証としての施設整備”の充実
(2) “生きるための生活費”と“社会活動のための交際費”の安定
(3) 健康増進の必要性と医療機関へのアクセス
(4)-1] 信仰の継続・自立・生きがいづくり
(4)-2] 協調と介護負担の軽減
最後に、この調査において「高齢者は気を使っていて、自分のウオンツを普段は表現していない。」ということがわかった。それについて、これまでの調査データをコーディングし、それらの連関を考察しつつさらに30人ほどの方からインタビューを行いGrounded theory approach8,9,10を用いて、「“高齢者が内在する要求や欲求(ウオンツ)を表明する判断をどのように下すか”のフレームワーク」を考察した。今回はそのフレームワークを参考に示す。
「“高齢者が内在する要求や欲求を表明する判断をどのように下すか”のフレームワーク」(図)
The framework for understanding how eldery people make decisions to request their desires or requests(“WANTS”) to someone.
1. 自己存在価値の認識(自己存在価値の確立、内在する認知された社会的パワー)
1-A 人身体の受容プロセス
1-B 社会構造の変化への適応プロセス(今の社会に生きている実感)
1-C 役割機能
1-D 貢献の蓄積
1-E 目的的活動の自立
1-F 自己決定権の掌握(選択が残されていて、自分が決定する権利があること)
2. 自己被認知の準備状態
2-A 効果的支援者との接触
2-B 過去の経験
2-C 過ったラベリングがされていないこと(過った固定観念がないこと)