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c. 「当事者ウオンツ系図」と「一般住民・専門家ウオンツ系図」とのギャップ

当事者ウオンツは、結果2(前項)で示したごとく分析した。また一般住民・専門家ウオンツ系図は、ケアスタッフ、一般住民にアンケート調査で、独居老人、脳卒中で障害のある方、その他の障害者が抱えていると思われる問題点、どうなりたいと思っているかというウオンツを書き出してもらったものを系図にしたものである。この2つの系図は、原則として独立して作成された。少なくとも同日の分析は行っておらず、お互いの系図からの影響を受けないように配慮した。影響を考えてそのギャップが大きくなることがないように、当事者ウオンツ系図をまず仕上げて、その後で一般住民・専門家ウオンツ系図を作成した。このプロセスにより考えられることは、ギャップが薄められる可能性があることである。その系図からどのようなギャップがあるか比較した結果を示す。ただし、系図の比較といっても、系図はあくまでカテゴリーの整理として用いており、比較は系図のウオンツカード1枚1枚について比較を行っていった。

 

(1) 当事者ウオンツ系図にあって、一般住民・専門家ウオンツ系図になかったもの

(当事者ウオンツ系図名に合わせて提示する)

 

1] 「高齢者が福祉や保健の十分な情報が得られている」(系図A)

・保健・福祉の情報提供について、相談窓口が役場や保健福祉課ではなく、住民が集まる商店街、病院など必要とする住民の動向に合わせた窓口の設置、情報提供を望んでいること。

・情報提供手段として、有線放送が使われているがそのスピーカー設置やアナウンスの声質(男性の声が聞こえやすい)について高齢者が解決策を要望していること

・ラジオ、ケーブルテレビなどの他のメディアでの情報提供を要望していること

・何が本人にとって必要かわからないのが情報の特性なので、それを配慮して行政、あるいは地域で民生員などを介して高齢者に情報を提供してほしいということ

・広報での情報提供は高齢者には届かない情報手段の可能性があり、有線放送ができれば地域で必要な情報を口頭で伝えるしくみが求められているということ

・点字での情報提供も要求されているということ

 

2] 「人が集まれる場所がある」(系図B2)

・「市」への思いと期待が強いということ。「市」に自分で作った農産物を運んで売りたいと思う高齢者がいるが、運搬作業ができないため対策を要望しているということ

・役場などの公共施設は、いわゆる“役所”としての業務機能のほかに、“公共施設”としてくつろぎの空間の機能も要望されており、それに応じた雰囲気づくりと職員の対応が望まれているということ。また、自宅に近い集会所の建設を望んでいる高齢者もいるということ

・浴場(銭湯)の復興を願う高齢者が少なくないということ(数量的調査は別に必要)

 

3] 「交通機関を自由に利用できる」(系図B3)

・安心して町を歩くために公衆トイレの充実や休憩所の設置が要望されていること

・道の休憩スペースにはベンチなどがあり、安心して休める場所であること

・公衆トイレは車椅子でも利用できるなど身障者、高齢者に配慮して欲しいこと

・バス停は冬の寒さ、風雪をしのぐためにも、屋根や風よけが必要で、やっと歩いてきた高齢者にとって座る椅子がないのは地面に座ることを余儀なくさせるので、ベンチの設置が望ましいこと

 

 

 

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