介護者、被介護者のデータから得られたカテゴリー分類(最終的カテゴリー分類とは異なる)を基に老人クラブ45人、身体障害者6人、PRAを保健協力員、民生員、食生活改善委員28人(町内全対象者数182名)、「高齢者にやさしい町づくり」勉強会参加一般住民15人に行った。ブレインストーミングの目的で行われた投票は、カテゴリーを明らかにし、視覚的にもそのカテゴリーに属するカードが「面」として理解できるように配慮した。しかし、このカテゴリー分類自体が中間的なものであるため、そのカテゴリーに束縛され過ぎることがなく自由に発想すること、つまり参加者にある程度カード1つ1つを「点」として理解できるように配慮し、投票はカテゴリーにではなく、カードに投票してもらった。投票は3点を自分の思いに応じて投票する“3点法”とした。グループディスカションによって得られた情報は書き取って、新たなカードとして添付したり、解釈に関する情報は書き取りし、後のデータ分析に活用した。
ここまで得られたデータを全て“ウオンツ”カードに変換し、“目的−手段”のロジックに従い系図(ツリー)を作成した。分析は研究者、ケアスタッフ、保健福祉課職員が行った。カテゴリー分類、系図作成にあたっては、FASID認定のPCMモデレーター2人と初級、中級コースを終了した3人が参加して、PCM手法を学んだ大学院生が主にロジックの組み立てにあたり、直接的な意味合い、カードの解釈における背景の解釈と解説にはケアスタッフの意見を参考にした。最終的なロジックの制御はPCM手法の正規のコース(FASIDにおけるPCM研修の初級、中級)を終了した著者が、ケアスタッフの解釈や意見を参考にしながら、また、関連性のあいまいな部分についてはケアサービス利用者や、ケアスタッフ、病院受診患者やその家族らから関連する情報をインタビューで聴取し、系図の分析を行っていった。
ケアスタッフ(在宅介護支援センター職員・訪問看護婦・ホームヘルパー・デイサービス職員・特別養護老人ホーム職員・保健婦・保健福祉課職員)に対しては、高齢者や障害者を中心としたサービス利用者が抱えていると思われる問題点、“ウオンツ”を最低5枚以上、できれば20枚を記入していただく“搾り出し方”によって専門家からみる当事者の内面についてのデータを抽出した。
また、上記プロセスで得られた“当事者系図”、“一般住民、専門家系図”を基に、主に“当事者系図”に対して1、健康まつりに参加した一般住民48人、2、ケアスタッフ20人、3、町立病院職員24人、4、介護保険策定委員12人、5、町議会議員14人、6、町役場課長19人、7、町長・助役からPRAを行ってもらった。PRAではフリーなディスカション、投票、意見の書き出しを通して、系図への補足、カウンターメジャー、系図からの気づきなどのデータを取得し系図へ反映させたり、カウンターメジャー、気づきデータとして別に分析も加えた。
以上のプロセスをもとに、研究者が中心となり、ケアスタッフ、行政職員らの意見を聞きながら系図を補っていった。必要に応じてカードの関連性の確認から、高齢者や患者、ケアサービス利用者などにインタビューを加え最終的系図を作成した。さらに最後に、PCMモデレーター(筑波大学社会医学系、平山恵先生)に系図のロジックの検証をお願いした。情報収集方法と探求の度合いは異なるものの、これまでの分析過程で結局、町民の657人から情報を収集したこととなり、30歳以上の人口の約10%にまで至った。
b. “ウオンツ”分析系図
ウオンツ・データを分析し系図化したものを「ウオンツ分析系図」と名づける。「高齢者が安心して生活できる」という中心ウオンツは分析後も変わらず中心に据えた。その手段となるサブカテゴリーは「高齢者が生活しやすい環境である」、「高齢者が経済的に安定している」、「高齢者の身体が健康である」、「高齢者が精神的に満たされている」、「介護者や家族が精神的に満たされている」であり、生活環境、経済、身体の健康、本人と家族の精神的安定が大きなカテゴリーとしてまとめられた。