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それらのデータがあれば、目的カードをその仲介役、解釈として“原因と結果”“手段と目的”のロジックが成り立つように作成することができる。これは、研究者が新たな概念を追加したというより、解釈して補ったことになり、データへの忠実性は損なわれないと考えられるからである。あくまで、得られたデータに忠実に分析は進められていく必要がある。3つ目の方法は、以上2つの方法でデータがない場合である。これはデータが飽和されていないか、その状態が満たされている場合である。いづれに合致するかは、現在の対象者の実状を知るものに確認する必要がある。その解釈には、ケアスタッフ、町行政職員からの情報収集を行い、満たされているという事実がなければさらにサンプルが必要である。

以上延べた分析のプロセスはデータを目的的に集約しつつも、手段としての方向へ多面的、拡散的に発展させるものである。この分析プロセスにおいてデータの飽和化が確証されると考えられる。

 

3 結果

a. 調査人数と属性、調査・分析のプロセス

方法で述べたようにデータの飽和と連関を明らかにするために対象者を戦略的に順次積み重ねていった。その結果以下の調査対象者から情報を得ることとなった。まずは、調査期間の関係もあり7月7日に七夕の短冊データを収集した。対象者は町内の特別養護老人ホーム入所者と、町内の2つのデイサービス利用者で268枚のカードが得られた。ついで、問題を最も抱えていると予想される集団として、町立病院の往診患者とその介護者(家族)22人(被介護者7人、介護者15人)(表6)、一人暮らし老人15人(表7)、在宅介護支援センター利用者8人に半構造的インタビューとそれに関連する探求的質問を用いて個別インタビューを行った。さらに、準寝たきりから虚弱に分類される高齢者を対象とするため町内でデイサービス2施設を受けている29人(デイサービスAは1グループで7人、デイサービスBは2グループで11人づつの2グループ、計3グループ)(表8)をグループディスカション形式で情報を収集し、さらに情報を補う目的で必要に応じて個別インタビューを加えた。これらが、比較的徹底的個人アプローチで行われた調査対象者である。これらの対象者から得られたデータは逐次書き取り者により書き取られ、1つの“ウオンツ”データあるいは問題データを1枚のカードに記入した。これらは、全て“ウオンツ”データへの変換を行い、カテゴリー分類を行った。ケアサービスに対して差し迫った問題がないものの一般住民からの意見も聴取しておく必要があり、アンケート形式で「介護保険説明会」「新規ゴミ処理方法説明会」に参加し、アンケートに回答した一般住民65人からデータを収集した。このデータは介護者、被介護者で属性化された上記対象者とは分けて分析を行った。

ここで、元気な高齢者、虚弱な高齢者、介護を必要とする高齢者、比較的若年でも介護が必要な障害者、自立度の高い障害者、これらの分類とオーバーラップするが独居高齢者、老夫婦世帯、それに加えて介護者を、現在の高齢あるいは障害の当事者と定義して“当事者”と呼ぶことにし、“当事者”の分析によって得られた系図を“当事者系図”と呼ぶこととする。これに対して、高齢者ではない一般住民、ケアスタッフ、行政関係者、保健協力員、民生員、食生活改善委員、介護保険策定委員などを“一般住民、専門家”と呼び、それらの分析によって得られた系図を“一般住民、専門家の系図”と呼ぶこととする。

 

 

 

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