e. データ分析方法
(1) 1つのカードに1つのデータを記載
得られたデータは、1つのカードに1つのデータを記載した。データ抽出方法や一般的傾向からデータは、“現存するあるいは予想される問題点についての”データ(問題データ)と“ウオンツ”データに大別される。全ては得られたデータに忠実な“in vivo”データである。カードの大きさは考えをまとめたり、思考する際に重要であるが、カードの大きさは76mm×127mmと十分に大きいものとし、マジックで記載することとした。記載されたカードは粘着剤が裏面につけられているので、そのままボードに添付して視覚化されるようにした。
(2) “ウオンツ”データへの変換
問題データは“ウオンツ”データと表裏の関係にありデータを変換できる(変換コード化)。例えば、「介護者が介護を負担に思っている」という問題カードは「介護者が介護を負担に思わない」という目的や要望カード、つまり“ウオンツ”カードに変換できる。このような作業を繰り返し、問題カードを全て“ウオンツ”カードに書き換えて、“ウオンツ”データとした。これで全てのデータが同種のものとして分析の準備が整う。
(3) Project Cycle Management 手法(PCM手法)5.6における目的分析
〜“原因と結果”“手段と目的”のロジックに基づいて〜
本来PCM手法は、参加型問題解決手法である。種々の情報や目的から中心問題を設定し、問題の存在に基づき問題を分析し体系化を行い、問題を解決するためのプロジェクトを列挙し、問題解決のプロジェクトを選択する手法である。さらにプロジェクト遂行のためのマトリックスに沿って一定の基準でモニタリングと評価を加えながらプロジェクトを発展、継続していくという特徴を持つ。今回の調査では、最終的に得られた分析結果が実際の行政活動に反映されることも1つの目標としているため、このような背景も意識した。さらに、PCM手法における、問題分析、目的分析は“原因と結果”“手段と目的”という論理性を追求し、この一貫した論理に従って個々のデータの関連を分析していくという点で科学的である。PCM手法の目的分析に従って“ウオンツ”データを論理的にツリー構造化することは、それぞれの“ウオンツ”カードが目的とする上位カードにつながっていき、より階層の低い“ウオンツ”カードはより上位の目的カードの1手段であることが図式化される。目的達成、問題解決のための価値はそのカードごとに異なる可能性があり、その価値や他の要因つまり、OECD開発援助委員会(DAC)で提唱された評価の5項目―効率性、効果、インパクト、妥当性、持続性―などを軸として総合的な評価を行い、実際の対策をこうじる必要がある。
この分析手法には、もう1つの原則がある。つまり、複数のサブカテゴリー(ツリー構造において直ぐ下位の“ウオンツ”データ)は直ぐ上位の目的カードに対して、対象者の概念や意識の中で“原因と結果”“手段と目的”のロジックにおいて十分条件である必要があり、その関係が成り立っているかを分析する必要がある。これは、データが飽和しているか、つまりデータに漏れがないかを確認する分析作業なのである。この分析過程において、3つの対処方法が考えうる。新たな下位のデータの必要性があった場合、1つ目の方法は、カテゴリーに含めていなかったデータにそれを説明しうるものがあるかどうかを探すことになる。2つ目の方法は、直接1つランクが下のサブカテゴリーがデータとしてなければ、予想されるサブカテゴリーを説明するようなデータが、さらにツリー構造の下のランクにないかを探ることである。