しかし、本調査において投票は、他者から抽出された"ウオンツ"データをブラウズして、自分の思いや要望を投票するという作業の中で、ブレインストーミングし、データを集中して読みこむことを目的とした。最終的にはその読みこみから、グループディスカションを行い、系図への同調やその理由、付け足しとその論理などを抽出し、短時間で効率的、効果的に系図の漏れや理論的未熟性を補うことにある。そういう意味で、投票の量的な判断あるいは重み付けを主な目的に取られがちな衆目評価というtermより、Participatory Rapid Appraisal (PRA)というtermがより適していると考える。
PRA の利点は、他者の意見をブラウズする中で短時間でブレインストーミングができ、漏れているデータを探索することでデータを補う効果があることである。さらに、グループディスカションを行う中で、個々のデータの、あるいはデータ相互の意味合いを深めたり、関連や文脈などについて多面的、多角的な視野や価値観からの解釈につながったりする可能性がある。今回の衆目評価では、5人から15人ほどをグループとし、各グループの進行役(促進役)、データ管理者に負担がかからないようにした。データは、1つの意見を1枚のカードに記載するようにし、カードの関連性により並べて表示し、視覚化に配慮した。自記することが困難な方のために、書き取り者を各グループに配置した。
PRA の対象者は、自立した高齢者という属性に注目して老人クラブの方々、比較的若年で障害を持っている方々、「健康まつり」を見学に来た一般住民、高齢者や障害のある方を住民サイドで援助している民生委員・保健協力委員・食事改善委員の方々、専門家であるケアスタッフ(在宅介護支援センター職員・訪問看護婦・デイサービススタッフ・ホームヘルパー・保健婦・地域リハビリテーションに携わる理学療法士・役場保健福祉担当職員・病院職員(医師・看護婦・理学療法士・看護補助員・管理栄養士・事務職員))、行政の諮問機関として専門的な立場に立つ町介護保険対策委員、町民の代表であり行政担当者である町議会議員、町長、助役である。衆目評価の際には、カウンターメジャー(解決方法、実現方法)についてのデータも収集することとした。これは、最下層のデータがどれだけ飽和化しているかを確認できることと、研究後の実践的な活用を意図したからである。なお、最下層のデータの飽和化とツリー内への完全な包含は"ウオンツ"ツリー全体のデータ飽和化を保証するものとなる。
d. 調査対象者
調査対象者を列挙する。1、町立病院の往診患者とその介護者(家族)、2、独居老人、3、町内でデイサービスを受けている高齢者、4、特別養護老人ホーム入居者、5、老人クラブ、6、身体障害者、7、在宅介護支援センター利用者、7、ケアスタッフ(在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、ホームヘルプサービス、デイサービス、社会福祉協議会、町保健福祉課、特別養護老人ホームの職員)、8、町立病院職員、9、介護保険策定委員、10、保健協力員・民生員・食生活改善委員、11、一般住民(「高齢者にやさしい町づくり」勉強会参加一般住民、介護保険説明会に参加した一般住民、健康まつりに参加した一般住民)である。