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c. 調査方法

以下の調査方法は、情報の収集と整理、分析をする中で、個々のデータの意味合いとそのデータ間の連関についての洞察を行い、データそのものやデータの連関のロジックが飽和することを目的に順次戦略的に対象者に応じて、その調査方法、調査内容を検討していった。

研究者、ケアスタッフとの討論の結果、中心的な目標、中心的な“ウオンツ”を「高齢者が安心して生活できる」こととし、それを実現するための情報を収集することが、高齢者の“ウオンツ”抽出として今回の目的にかなうものと考えた。これは暫定的な中心“ウオンツ”であり、データ収集の途中など分析の過程で必要であれば変えうる柔軟な定義とした。また、この中心“ウオンツ”は十分に包括的な意見を抽出しうる限定を加えないものと考えられる。

 

(1) 個別インタビュー(半構造化インタビュー)とそれに引き続く探索的質問

特に問題を抱えたり、支援が必要と考えられると思われる3グループに半構造化インタビューを行い、さらに回答内容に応じて探求的質問を加えることとした。2グループは、何かしらの疾患を有し寝たきりあるいはADLや社会的環境要因などで通院が困難な町立病院の往診患者とその家族で、もう1グループは独居高齢者である。いづれも日常生活に支障を来たすような痴呆がないこと、会話が可能であることを前提とした。インタビュー時間は20分から40分とした。方言などで理解が困難な場合は、同行した町内のケアスタッフあるいは役場職員が解説を加えることとした。原則として、必要がない限り町関係者はインタビューに参加しないこととした。これは、ケアサービス提供者あるいは行政への気遣いでデータが偏ることへの配慮である。また、得られたデータは町関係者には、名前がでるような提示はしないこと、プライバシーは保たれることをインタビュー対象者にあらかじめ説明し、これに従ったデータ管理を行った。

インタビューは医学、保健、社会学などの背景を持つインタビュートレーニングを受けた大学院生であり、インタビューガイドに沿って2人あるいは3人組で行い、インタビュー内容を書き取り、データを収集することとした。ここでのデータはコード化しない、インタビューされた生データである。また、複数のインタビュアーがかかわることから、本研究の目的と、インタビューでの最低限の質問項目を示し(表5)、インタビュー対象者の知り得る範囲での生活史、利用サービス、生活自立度などの基礎資料をそれぞれのインタビュアーにあらかじめ提示した、

 

(2) 個別インタビュー(半構造化インタビュー)

在宅介護支援センターが町民の公的なサービス調整機能と相談窓口の主要な役割を果たしている。その在宅介護支援センターに相談に来た、何かしらの介護上の問題を抱えた介護者からインタビューを行うこととした。インタビュアーは在宅介護支援センターのソーシャルワーカーと看護婦である。質問形態は半構造化インタビュー(表5)とし、データを書き取ることとした。

 

(3) グループディスカション

グループインタビュー、グループディスカションは複数の対象者を同席させ、時間と空間を共有しながらインタビューが進行していく。その利点は、グループダイナミクスであり、他の参加者の意見への同調や反論などを惹起しながら、また、他の参加者の意見をもとにブレインストーミングできるため、潜在している“ウオンツ”や問題点を抽出できることである。

 

 

 

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