2.4 機内の電磁波環境調査事前確認試験
試作した電磁波環境測定装置の総合的な動作確認及び機内で検出される電波強度等の確認を目的として実験を行った。
実験は、平成11年11月24日羽田-関西空港間で日本航空115、114便のボーイング777型機(JA8983)に搭乗して実施した。
図2.4-1は機内における電磁波環境測定装置の設置状況である。測定には客室最後尾中央部の4座席を利用し、図のようにその中央2席にスペクトラムアナライザと受信アンテナを設置した。これらは、機体の揺れや離着陸時のショックで移動しないように座席に固定した。スペクトラムアナライザの制御及びデータ収集に用いるパーソナルコンピュータは、離着陸時には測定者の膝の上で保持し、巡航中は座席テーブルに置いて使用した。機内での測定手順の概要は次のとおりである。
(1) 乗客が搭乗しドアクローズの後、機体のプシュバックが始まったころスペクトラムアナライザとパーソナルコンピュータの電源投入。
(2) 測定に関係するデータの事前入力。図2.4-2は、パーソナルコンピュータの初期表示である。この表示面でデータ番号、測定日、航空便名、使用滑走路等のデータを入力し、その後測定を開始する。
(3) 測定中、パラメータ切り換え、データ記録等はすべて自動で行われる。
(4) 目的空港に着陸し、機体が最終的に停止した段階で測定を中止する。
(5) 使用滑走路番号等の追加データがあれば入力して測定終了。
図2.4-3は、11月24日JL115便の飛行ルート及び飛行高度である。飛行ルートで、HND、HYE、KIX等は空港、ウェイポイント等の記号で、当日は羽田から箱根上空、河和上空、御坊の上空を通過して関西空港に着陸した。なおここでは省略するが、当日の上り便は紀伊半島沖から海上を飛行して羽田に到着した。飛行高度は、GMT3時23分(日本時間12時23分)から3時47分(同12時47分)までの間が22000フィートを以上であった。測定周波数帯は前述のとおり7種類であり、これらを広帯域と狭帯域に分けて測定・データ記録した。一連のデータ収集には約1分を要するため、今回のそれぞれの飛行で70から90回一連のデータを収集できた。
図2.4-4は測定結果の一例で、VHF帯(122.5〜147.5MHz)を狭帯域で測定したときのスペクトラムである。この例では128、132.5、140及び144MHz付近で-80dBmを超える電波が観測された。今回は、測定開始時から終了時までに収集される個々のスペクトラムの中から最も高い電波レベルを抽出して記録した。記録結果の一例を図2.4-5に示す。測定開始時(3:03)から終了時(4:19頃)までの間に最高レベルは、-86dBm〜-74dBm程度の範囲で変動しているが、3時55分頃に-35dBmの強い電波が受信されたことがわかる。同様の手順で周波数795MHzから995MHzの間のスペクトラム測定から得られた最高レベノレの測定例を図2.4-6に示す。