使用した擬似衛星送信機はロックウェル・コリンズ社が開発したものであり同社の自己測量型擬似衛星(SSPL: Self-Surveying PseudoLite)技術を利用している。SSPLは、互いに独立に動作するSSPL送信機問で共通の時刻基準を確立するために、GPS衛星と同期してロックを維持している。ロックウェル・コリンズ社独自の擬似衛星エフェメリス手法(Farley 1998)を利用してPL位置をターゲットPL受信機に提供している。ターゲットPL受信機はPLGRのソフトウェアを小改修したものでありPL信号及び/又はGPS信号を用いて航法処理を行う。野外試験はアイオワ州シーダーラピッズのロックウェル・コリンズ社試験場で実施された。
序論
PLシステムによりGPS受信機の動作に多くの利点がもたらされる。これには激しい電波妨害環境でGPS航法を利用できるようにすることから正確なタイミング及び周波数の情報を提供することにより迅速な捕捉を可能とすることまで含まれる。PLはより大電力の信号を受信機アンテナに供給することにより干渉に対抗する。これは、衛星との距離に比べて相対的に受信機と近い距離にPLを配置することによって達成される。PLを配置することが比較的容易でありまた低価格であることから、GPS受信機の脆弱性に対する魅力的な解決策となる。従来型ユーザー機器はソフトウェアの改修のみによりPLの付加機能を利用できる。
しかし、頑強なPL航法システムを構築するためには解決すべき多くの基本的課題がある。これには、大電力PL信号の影響(例えば、遠近問題、非参加受信機への干渉、及び同一サイト干渉)からPLとの幾何学的距離が小さいことの影響(例えば、拡張カルマン・フィルタの不安定性、航法解が一重に得られること、幾何学的精度劣化率(DOP: Dilution of Precision)劣下の問題)までが含まれる。これらの課題の背景には、正確な航法解を得るために厳密なGPSシステム時刻同期要求が必要とされるということがある。
米陸軍通信電子コマンドでの実証試験は、以前に開発されたロックウェル・コリンズ社プロトタイプPLシステムを用いて、可能な限りこれらの課題に対処するものである。RFを放射する野外試験と試験室での試験の2系統の試験を実施した。実施した試験を表1に示す。1998年の秋と冬に試験を実施した。実証試験では米陸軍通信電子コマンドとのC3TE&I契約において、ロックウェル・コリンズ社がコンピュータ・サイエンス・コーポレーションの下請契約業者となった。