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一方、通報先が管制機関の場合、地上側としては定期的に運航状況をモニターすることが可能となれば、SAR等を目的とした運航監視業務に対して非常に有効であり、データリンクはそのための有力なツールとなりうる。位置通報時間間隔の短縮およびリアルタイム性の向上により、さらに迅速な捜索救難が可能となるほか、機上側から送信された運航状況レポートの送達確認が実現されることにより、SAR発動の正確性向上が期待できる。このような性能要求は将来ATNが実現されれば充分満足されるものであり、小型機運航においても充分な運航監視が期待できる。

 

5.2.3 結び−今後の課題

3年間に亘る調査・研究により、小型機運航に対する将来の支援サービスのあり方について議論するための実証データを得ることができた。今後は、本委員会のアウトプットを基に、単に机上論ではなく具体的な支援サービスの実現方策を検討していくことが求められる。

 

コンテンツに関しては、小型機運航の実情に合った効果的なコンテンツ(峠の気象観測情報、低高度気象情報、トラフィック情報等)の提供体制を整備する必要がある。特に低高度の気象情報については、データリンクを情報の収集にも適用し、小型機が通常飛行している低高度帯の視程に関する情報を自動的に得る仕組み(Auto PIREP)と、それを蓄積するデータベースの構築が望まれる。このような気象観測システムが構築できれば気象観測の現状および予測精度が向上し、小型機運航者だけでなく広く一般に有益な情報となることから、小型機用の気象観測機材の搭載を支援するような体制も検討する価値があろう。

 

アプリケーションについて、まずトラフィック情報提供は当面Information(情報)提供としてのサービス提供を開始し、VDLのような通信インフラの性能向上が実現されれば、衝突回避目的へと拡張することも可能である。気象情報提供については限定された気象メニューを一律に提供するのではなく、運航者各々が必要な情報を容易にリクエストできるような仕組みが必要である。

 

機上側のプラットフォームについては軽量、省電力、省スペース型の機上装置を安価に入手可能な環境を整備することに尽きる。小型機向けアビオニクスが大量かつ安価に出回る環境を構築することは容易ではないが、今後の方向性として、一般の電子機器分野で標準となっている各種規格や装置自体を積極的に規格体系に導入するとともに、アビオニクスの審査基準を国際的に整合化し海外製品の導入を容易にすることが求められよう。地上側のプラットフォームについても各々の運航者がばらばらに整備するのではなく、運航者が共通して利用可能な形で地上システムを整備することが望まれる。

最後にネットワークについては、運航管理やSARを目的とした運航監視のため、衛星通信利用による通信覆域の確保と通信プロトコル改善による送達確認機能の追加が必要となる。そのために衛星通信インフラはインマルサットやMTSAT等の衛星通信インフラを確保し、運航者が状況に応じて通信媒体を選択できるような運用形態を実現するとともに、ATNのように伝送遅延時間の保証と送達確認が可能な通信プロトコルの導入が望まれる。

 

 

 

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