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(3)小型機運航に対するサービスのあり方

 

(a)気象情報提供

データリンクにより気象画像情報のような大容量の情報を運航支援情報として提供可能なことが明らかになった。むしろ問題は、飛行評価試験において地上から提供されたレーダーエコー強度画像では試験高度付近の雲の状況が判断できなかったことから判るように、小型機の運航特性に適したコンテンツを如何に地上システムで調達し、適切な情報の「鮮度」を維持して提供できるかである。

現在、小型機運航者は地上において各種気象情報サービスを利用しているが、小型機運航において最も重要な情報(峠の状況や、低空気象状況等)は現状では入手手段がないといって良い状況である。コンテンツの問題に対する一つの解決策として、本調査・研究では気象情報を提供するだけでなく、収集するためにもデータリンクが使えることが指摘された。大型機ではADS等のダウンリンクメッセージに気象情報を含めて地上に送信している。小型機がデータリンクで湿度や気温の情報だけでも地上に随時自動で送信(Auto PIREP)し、地上側の各小型機からの情報をデータベース化できれば、逆に集めた情報を機上に送信することは容易である。

 

(b)トラフィック情報提供

トラフィック情報には2つの利用方法に大別される。一つは衝突回避(コンフリクト検知)のため、もう一つは遠方における相手機の存在を認識(周辺トラフィックの把握)するためである。トラフィック情報提供を「衝突回避」を目的として利用する場合、試用システムで利用した通信インフラ(VHF-ACARS)では、要求される情報更新間隔や伝送遅延時間を満足することは困難であった。

しかしながら今回の調査・研究では、提供するコンテンツさえ入手できれば、現状においても地上からのトラフィック情報提供は後者の情報(Information)提供として非常に有効な支援となり得ることが明らかになった。情報提供としてのトラフィック情報提供は、現在音声で行われているTCAアドバイザリに近い形になることが予想される。TCAアドバイザリは現在有効に活用されているが、データリンクによりTCAアドバイザリを大きく上回る運航支援サービスの実現が期待できる。また将来VDLのような高速に大容量のデータを送信できる新しい通信インフラが構築されれば、TCASやADS-Bといった空対空の通信インフラを補完する衝突回避としてのトラフィック情報提供も実現の可能性がある。

 

(c)運航状況の通報(位置通報および出発到着時刻通報)

通報先が運航者の場合、1]必要だと判断した場合に運航状況がわかる(ディマンドコントラクトに相当)、また2]機体側に何か状況変化があった場合に運航状況がわかる(イベントコントラクトに相当)のであれば、常時運航状況を地上側で管理する必要はないという意見が運航者に多い。このような使い方であれば伝送遅延時間・伝送容量の要求はそれ程高くなく、衛星通信の導入により覆域の問題が解消されれば充分な運航管理が可能である。

 

 

 

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