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2 情報リテラシー育成についての考え方

 

(1)情報リテラシーの捉え方

情報リテラシーという概念は地方公共団体に勤務する大方の職員にとって耳新しい概念である。国の「行政情報システム各省庁連絡会議」が平成9年7月18日付けで了承した「平成10年度における行政情報化の取組みの考え方」に「人的基盤の強化」の項目があり、その中で「情報リテラシーの向上」が掲げられ、そのことで初めてこの言葉に接することとなった人々は少なくない。情報リテラシーの意味合いは、一口に「情報活用能力」のことであり、「情報及び情報手段を主体的に選択し、活用していくための個人の基礎的な資質をいい、具体的には、自己の担当業務を遂行するために、コンピュータをはじめとする情報機器などを有効な支援機器として利用できる能力のこと」と考えられる。

さて、それでは今日までの地方公共団体職員には情報活用能力が存在していなかったのであろうか。従来の職員は、情報活用能力の向上を唱える必要があるほどに低位な能力しか保有していなかったのであろうか。

地方公共団体における電子計算機の活用は昭和40年代から徐々に広がりをみせ、昭和50年代において本格化している。いわゆる大量定型の事務を中心に地方公共団体の事務の効率化が図られた。しかし、そこにはコストの課題が存在していて、少量・非定型の事務に対するOA化については、昭和50年代に入ってのコピー機や電卓の普及、昭和60年代に入ってのワープロの普及という経過をたどってきた。

しかし、電卓やワープロなどの事務機器の普及は個人の事務能力を改善し、相対的に事務効率を向上させはしたが、役所という典型的な縦割り組織が抱え込んできた「行政各部における情報の抱え込み」という体質を、根底から改善するには至らなかった。

今日まで、地方行政の現場では、その縦割りに細分化された組織内部に向かって外部あるいは他の部署から流入する情報やその部署において逐次に生産され蓄積される情報、それらがごく一部の例外を除いては、データベース化され、統合されて活用されるというにはなかった。

紙ベースあるいはフロッピーによるデータの扱いには限界があり、電卓によるデータ処理においても、それは「ソロバンよりも便利」という程度のものに過ぎなかったのである。データベース化さえも困難であるのなら、データベースの管理や共有化など及ぶべくもなく、細部にわたる情報処理のために高価な電子計算機を活用したり、人的資源をそれに投入するという経済的な余地のない地方行政の現場においては、諸情報の統合と活用は誠に困難な夢物語に過ぎなかった。

 

 

 

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