第3章 地方公共団体職員に求められる情報リテラシー
本章では、ネットワーク化の進展に伴う地方公共団体の変化に対応するため、地方公共団体職員に求められる情報リテラシーの内容について明らかにする。
第1節 情報リテラシー向上の必要性と意識改革
1 情報リテラシー向上の必要性
ネットワーク化により社会全体での情報流通が活性化する中で、地方公共団体のみがそうした動きに加わらない弊害は大きい。
例えば、地方公共団体のネットワーク化が進まないと、住民が様々な手続きを行う際には、これまでどおり、地方公共団体の窓口に、開設時間内に出向かなければならない。家族形態の変化、就労形態の変化とともに、住民の行動する時間帯や行動範囲は多様化・広域化してきているが、窓口のみでこれに対応することには限界がある。したがって、地方公共団体がネットワークに対応しないと、住民の活動の自由度は大きく制約されることになる。
また、民間企業が各種の許認可手続きなどで地方公共団体と接触する場合、やはりこれまでどおり、窓口の訪問や郵送といった時間のかかる方法で行わなければならない。地方公共団体内部での作業期間について短縮の努力がなされていない場合には、必要な手続きを終了するまでには、更に多くの時間を費やす必要がある。これは、価格・品質や海外企業との競争の激化によって経営の一層のスピード化が要求されている現在の市場環境の下では、民間企業の事業発展の大きな障害となる。
このように、地方公共団体がネットワーク化に対応しないと、住民や企業は大きな不利益を被ることになる。また、こうした不利益は、住民や民間企業だけではなく、地方公共団体自身も被らなければならない。
情報発信をまずネットワーク上で行おうとする傾向は、民間企業を中心に強まっている。例えば、企業の経営に関する情報が行政運営上、必要であっても、ネットワーク化に対応していなければ素早い情報の入手は困難であり、場合によっては、対応を誤る危険性もある。
また、ネットワークは、住民やNPOなどに対して情報を発信したり、あるいは情報交換を行うためには低コストかつ効果的な手段である。しかし、ネットワーク化に対応しない地方公共団体は、住民やNPOなどと協調する手段の一つを失うことになる。住民やNPOとの協働が不可欠となる今後の行政運営にとって、このようなことによる損失は大きいといわなければならない。