したがって、バーチャル・コミュニティそれぞれにおいて、モラルや規則を置くことも重要であり、参加者もコミュニティに応じてそれらが異なることを理解し、多様な価値観を持つことが重要となる。
具体的に企業や行政など既存の組織においてバーチャル・コミュニティを考えると以下のような特徴が挙げられる。
・これまでの階層的業務からプロジェクトによる横断的業務へ(職場と業務の分離)
・一人1業務(1部署1業務)から複数業務へ
・情報の共有と一元管理
・組織外との連携、アウトソーシングヘの対応
・勤務管理者と業務管理者の隔離による人事評価の問題
・孤立感の増加
短所として挙げておいた人事評価については制度と方式の課題であり、孤立感は心的支援の課題である。高度情報化社会においては、この制度の改革と心のケアの課題を考慮しながら発展していくことが望まれる。
2 高度情報化社会の人材育成
高度情報化社会の人材育成の基本は、第1節に述べた「情報活用能力」に関する1]〜4]の向上が基礎となることはいうまでもない。それに加え、高度情報化社会の特性を考慮した「コミュニティ参加能力」が重要である。
コミュニティ参加能力とは具体的に以下のものである。
・モデリング能力とモデルを利用した思考
(a)概念的に物事を捉える力
(b)概念を表現し、それを使って物事を思考できる力
・組織のコーディネート能力
・組織におけるコントロール能力
・インタビュー能力
・情報の共有化能力
以上の高度情報化社会で生きていく力、技術と社会の変化に対応できる力を涵養することが人材育成であると考える。そして、そのためには体験的・帰納的な教育は重要であり、ネットワークを用いた教育は有効である。
しかし、必ずしもネットワークがなければ実現されないものではなく、既存の人材育成の場面においても上述した高度情報化社会の変化を意識し、それに対応した課題解決学習などを行えば成果は期待できるものである。