1.5.2.3 容器、包装及び標札の特例
危険物を運送する場合には、上記1.5.2.1 項に述べた容器、包装及び標札によらなけばならないのが原則である。しかし、告示は概ねIMDGコードに準拠しているので、これが日本国内の局地的運送に対して厳し過ぎないよう特殊事情等を考慮する観点から、運送船舶の航行区域、種類(旅客船であるかそれ以外の船舶であるか)等、輸出入である場合などによって特例が設けられている。
(1) 運送船舶の航行区域が本邦各港間、沿海区域、平水区域又は瀬戸内海である場合には、規則第6条の規定に拘わらず告示別表第10〜第12に定める容器及び包装によることができる。
(2) 輸出入の場合等における特例
危険物(放射性物質等を除く。)を本邦と外国との間又は外国相互間において運送する場合(輸出入の場合等)には、その容器、包装、標札等について特例が認められている。すなわち、海上運送の特質である国際間輸送の不可避性という観点から、輸出入される危険物(放射性物質等を除く。)の容器、包装、標札等は、米国及び英国規則によることができるとしている。現在、我が国も含め多くの国がIMDGコードを採用しており、この特例を利用する場合はすくなくなっていると考えられるが、IMDGコードの取入れ時期が国ごとに異なった場合等に、この特例が活用できる。また、輸出入される危険物が放射性物質等である場合に、当該放射性物質等がBM型輸送物及び核分裂性輸送物である場合を除いて、その容器及び包装は、カナダ政府の規則によることができるとされている。
(3) 運輸大臣の許可を受けたときは、許可を受けた容器及び包装によることができる(規則第390条の2)。しかしながら、この規定はあくまで特別の場合であって、許可を受けるべき正当な理由及び各規定に定めると同等の安全性の立証がなされたうえで許可されることに注意しなければならない。
1.5.2.4 危険物明細書
危険物の荷送人は、危険物を運送するに当っては船舶所有者又は船長に必要な事項を記載した危険物明細書を提出しなければならない。危険物を積載する船舶に対して予めその品名、数量等を知らせて運送の安全を期するとの趣旨であり、船舶所有者又は船長は危険物明細書なしに危険物の運送を引き受けることはできない。荷送人はさらに、運送しようとする危険物に係るそれぞれの規則の規定に適合しており、かつ、運送に適した状態であることを危険物明細書に付記するか又はこれを証する書類を添付しなければならない。
1.5.2.5 積載方法
荷送人によって容器に入れ、包装され、標札を付され、適切に表示された危険物を船舶に積載する場合には、船長は、危規則に定められた積載方法によらなければならない。規則は船長に対し、危険物の積載方法は告示別表第1から第8までに掲げるところによらなければならないとしている(本章末参照)。ただし、放射性物質等及び病毒を移しやすい物質の積載方法は別に規定されている。積載方法としては、火薬類及び極く一部の危険物に対するものを除き、「甲板上積載」又は「甲板下積載」である。