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○白石  地域ということを考えるには、おそらく二つの考え方があり得ると思います。一つは榊原さんや渡辺大使がおっしゃったように、地域主義、リージョナリズムについて考えるということで、そのときには、例えばASEANであるとかAPECというものが我々の念頭に浮かぶわけですね。この観点からいいますと、ASEANの場合には、今、榊原さんおっしゃったようにインドネシアがコアであって、インドネシアが安定しないと、ASEANという地域主義の機構は政治的に大きな役割を果たすことはできないだろう。

もう一つの地域についての考え方というのは、地域主義ではなくて、むしろ地域化。英語でいいますとリージョナライゼーション。それは、別に制度として、あるいは機構として地域的な機構ができるというよりも、事実上一つの地域が現実に、デファクトにできていく過程をリージョナライゼーション、地域化と考えますと、東アジアにおいて、広い意味で韓国、日本、東南アジアまで含めた地域ですけれども、この東アジアにおける地域化というのは1980年代の半ば以降急速に進展してきました。これも、しょっちゅう「リージョナリズム(地域主義)」という言葉で語られるのですけれども、厳密にいいますと、これは「リージョナライゼーション(地域化)」の方でして、これのエンジンというのは別に東南アジアにあったわけではなくて、実は日本がそういうリージョナライゼーションを進めてきたエンジンなわけです。

ですから、非常に単純にいいますと、日本がもう一遍経済的に元気になりますと、かつて、しょっちゅういわれていた東アジアの雁行型の経済発展がもう一遍そういう形で飛び始めますと、リージョナライゼーションというのは進む、ということを申し上げておきたいと思います。

概念的に申し上げますと、地域化と地域主義を分けて考える。ASEANというのはどうなるかわからないけれども、ともかく、日本がもう一度この地域のリーダーとして経済的にこの地域を引っ張っていくようになれば、ついてこれるところは結構ある。もちろん落ちこぼれているところがあって、インドネシアというのは今、その非常に難しい瀬戸際にあるのではないかと思います。

 

 

 

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