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○榊原  歴史の大きな流れとして、ある意味でネーション・ステートの時代が終わったわけですから、アジアでいえば、1945年からのネーション・ステートの時代がある意味で終わりつつある。そういう中で、ある種のリージョナリズムというのは21世紀に一つのシンボルに成り得る、そういう価値だと私は思っています。

ヨーロッパの例を引くまでもないですけれども、帝国の時代だともいわれていますけれども、そういった大きなリージョンというものを一つのアイデンティティーにしながら―アジアというのはもともとヨーロッパの反対概念で、ボスポラス海峡から東の方を全部アジアといっただけの話ですから、もともとアジアということ自体にあまり意味がないわけですけれども、東南アジアとか東アジアとか、そういう中で新たなリージョナリズムみたいなものが出てくる兆しはありますし、私も、ポスト・アジア・クライシスの中でそういう機運がいろいろなところで出てきつつあるという感じはします。韓国にしても中国にしてもインドネシアにしても。

ただ、ASEANということを考えると、やはりインドネシアが中心にならざるを得ないので、先ほどから議論しているインドネシアの政治問題をどういう形でおとしまえをつけるかということはASEANにとって最も重要な問題で、ワヒド政権が順調にこれで立ち上がっていけば、かなりASEANの核ができると思うのですね。インドネシア、シンガポール、マレーシア、これが非常に重要なのですけれども、そこの一点がちょっと今、どうも確信を持てない。そこを抜きに考えると、新たなリージョナリズムみたいなものの芽がいろいろなところで出てきている。

それから、インドネシアは確かに一つのバランスを完全に壊してしまった。権威を完全に壊さないで、グラデュアルなリフォームをすればよかったのを、バランスを全部ぶっ壊してしまって、権威を全部破壊してしまいましたから、これでリストアするのは非常に難しいという状況にありますけれども、逆に韓国などはそれを非常にうまく利用して改革をしたわけですね。マレーシアも非常にうまくやった。

そういう成功例がかなりありますから、新たな開かれたリージョナリズムみたいな芽は、我々としては大事にしていかなければいけない。大事にする中で、やはりインドネシアが大事だなと。インドネシアの政治情勢をどうするのだ、粉々になってしまったインテグリティーみたいなものをどうやってリストアするのか、ということを考えていかなければいけないと思います。

 

 

 

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