○渡辺 今、ASEANの問題については、ちょうど過去10カ月にわたり大学でも教えておりまして、発展の歴史、もともと中国の南にある中国文化圏の一部として考えられていた地域が、冷戦の最中に米国の政策もあって一つのASEANという形にまとまっていく、この経緯は白石先生があちこちで書いておられます。しかしそれが現実に経済的に成功している限りにおいては光輝き、それに入ろうとする国々が多く、結局ASEAN10という形にまでなってきたわけですけれども、今そこで明らかになっているのは、いわゆるレイトカマーズと、前からあった国々、あるいは社会主義をまだ保持している国とそうでない国々、あるいは島国と大陸の一部になっている国々、いろいろな対立があります。
この間、私が奥田ミッション、アジア経済再生ミッションの一員として、ラオスはちょっと寄っただけですが、ベトナム、タイ、その他に行きまして私自身が非常に強く感じたことは、最近ASEANに入った国々の中には、これでもうASEANに頼る必要性はなくなりつつあるとみんな考えているのではないかと思っていたわけですが、リーダーたちに聞きますと、経済危機がこの地域の1カ所で起こった場合に、それがすぐ我々の方にも影響してくる。一衣帯水の関係にあるのを今実感している。このような弱さを共有している国々が固まっていかない限り、自分だけが大丈夫ということでやっていくことは無理な時代になっている。しかも、他の国々と明らかに性格を異にするこれらの国々、ある程度の共通点のある国々、これが何らかの形でもっとコミュニケーションを増やしていかなければならない、こういう意識だけはあると思います。
質問者の方がいわれたとおり、現実の可能性があるかということになるとまた別の問題ですが、ASEAN域内の国々はアジア経済危機を経て、ますます何かしていかなければならない、こういう気持ちが高まる。それにつけても、今までのフランス語圏の国々ではまずコミュニケーションの道具としての英語から始めなければいけない。これだけ多様性の富む会議にどんどん出席するためには旅費が必要である。いろいろな意味でのアシスタンスが必要で、域外国の関心と助けが必要であるけれども、入ってはほしくない。そういう意味では、我々が樹立していく伸ばしていく地域機構の成長の道を温かく見守ってほしい、という気持ちが強いということだけは、私は感じました。
実際にそれがもし成功すれば、いろいろな意味でのフレンドリー・アドバイス、今、だんだんとASEANの中で非常に明らかになってきていることは、前は内政干渉がましい問題については一切タブーになっていたわけですけれども、だんだんとタブーが破られていく過程にあります。このような傾向を何らかの形で助長していくこと、それが成功する可能性は50%以下かもしれませんけれどもあるような気がいたします。その意味では、ASEANを利用して地域政策を進めていく必要性はある、というのが私の感じです。