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○榊原  これは、実は経済的な問題と政治的な問題の枠組みが違ってきてしまうという問題があるのです。今、白石さんのおっしゃっているような政治的な問題は、最終的に日本がいろいろな技術援助はできるでしょうけれども、アメリカ中心にやるしかないのですね。アメリカの非常に積極的な関与がない限り、インドネシアの政治的混乱はおそらく止まらないと思うのですね。つまり連邦制にするといったって、そんなに簡単ではありませんし、そんなことはすぐできるとも思わない。

ところが経済的にいいますと、アメリカの関与を若干排除しながら、リージョナルなコーポレーションを進める。98年の秋ぐらいからアメリカは非常に熱心にグローバルな国際金融システムの改革に取り組み始めましたけれども、その意欲は既に弱くなっています。つまり、もう危機は去ったからですね。

ですから国際的な、今、G7でやっているようなことが大きく実を結ぶとはとても思えない。そうなってくると、これからまた4年、5年の間に国際金融危機は必ず起こりますから、それに対するディフェンスをしなければならない。そうすると、これはリージョナルなディフェンスをやろうという気持ちが、少なくともアジア諸国の中に相当強くなってきます。これはインドネシアを含めて、ワヒド大統領も含めて強くなってきます。

ですから、ある種の開かれたリージョナリズムみたいなものをアジアに作っていくことは可能だと思いますけれども、インドネシアの場合非常に矛盾するのは、政治的問題を解決しなければそこにインドネシアが入っていけない。政治的な問題の解決はアメリカ主導でなければできない。そういう非常に大きな矛盾、これはアジアにおいてすべての国について同じような矛盾がおそらくあるのだと思いますね。あるのだとは思うのですけれども、そこが非常に難しい。

経済を完全に分けてしまえばそれはできるのですけれども、その辺のことがどう進展していくかはこの地域にとって非常に難しいことで、これは難しいながらもそういう方向で、政治的に一方でアメリカと協力しながら、一方で若干アメリカに反発しながら、地域的な協調を進めていくしかないですね。それ以外の道はおそらくないので、マドリング・スルーみたいな感じになりますけれども、私はそれしかないと思っています。

 

 

 

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