○モデレーター 政治関係、他にもしご質問があれば。―それでは、白石さんお願いします。
○白石 私は、ユーゴスラビアぐらい、相当メッシーですけれども、ああいう形でそれぞれの国が分裂していくとは必ずしも考えておりません。例えば、アチェの問題を考えると一番いいと思うのですけれども、インドネシアの中央政府がアチェの分離・独立を認めるとはとても想定できないのですね。というのは、それをやりますともう止まらなくなるのはみえていますので。
ですから何が最悪の事態かというと、中央政府が中央政府の決定として部隊をもう一遍投入して軍事作戦を始める。当然のことながら、アチェの方でゲリラが始まる。次第次第に泥沼化していく。それを国際社会は、日本も含めて困ったなと思いながら、何もできないで座視している。そういう事態が何年も何年も続く。というのが、おそらく一番起こり得るシナリオなのだろうと思います。
逆に申しますと、中央政府にとってもアチェの独立派にとっても、そういうシナリオはもう既にみえているのです。みえているので、今交渉が始まって、今のところは何とか政治的な解決がそこで図られるのを祈るばかりだと。失敗しますと泥沼化だと私は考えております。
コソボのようなケースを東南アジアについて想定するということは非常に難しいことだろうと思います。
○モデレーター 先ほど来のお話で、外部の国、日本も含めてですけれども、どのようにインドネシア、あるいはこの地域の問題について関与していくかということについて、白石さんはモニタリングという言葉を使われましたね。あるいはポリーシング・システムの問題をいわれました。榊原さんはこの地域の問題として国際的な中央銀行的なメカニズムが必要だとおっしゃったわけです。
IMFの関与が非常に批判の対象になっていた状況の中において、今のような、外部がモニターなりサーベイランスなり、あるいは中央銀行的な役割を果たしていくシステムを作れとか、こういう動きの中で、これも先ほどの榊原さんのお話では、アメリカは98年夏ごろまでは対岸の火というようにみていたということで、アジア諸国の不満をかったわけですが、そういうアメリカの姿勢の変化の前にアジア通貨基金というアイデアが出て、アメリカが一蹴してしまったということですが、アメリカはもはや、対岸の火とみなさなくなった状況の中で、地域的なメカニズムをどのように作っていったらいいのか。アジア経済の回復、あるいはインドネシアの政治の安定を図るための経済的な支えということを確保するためには一体何をしていくべきなのか。そういう点について少し議論していただいたらいかがかと思いますが。