ロンボクで火が上がると次の、というように、今、対症療法的にやっているわけですが、どこかでそれを転換させることが必要で、ワヒド政権がインドネシアの国の方向、21世紀をどうすべきなのか―それどころでない状況なのかもしれませんけれども、とにかく大きな道筋を出すとすれば、それは連邦制ではないかと私は漠然と思っています。
○モデレーター ありがとうございます。それでは白石さん。
○白石 非常に難しい質問がたくさん出ましたが、まず一つは、どうして軍の威信が地に落ちたのかという話ですが、おそらく三つぐらいの理由があると思います。
一つは、インドネシアの軍隊は非常に怖い軍隊だということをインドネシアの人たちはもちろんよく知っていたわけですけれども、これほどひどいとは思っていなかったわけですね。私、1990年から91年にかけて、軍がアチェであるとか東ティモールでどういう治安維持のやり方をしているのか、かなりまじめにインタビューしましたときに、アチェでは随分人が殺されているのではないかなという感じをもっておりました。そのときに私が考えたのは、ひょっとしたら100人とか200人ぐらい殺しているのではないかと思いましたが、まさか2,000人だとか5,000人殺しているとは思わなかった。それが多分、インドネシアの多くの人たちの感覚だったと思うのですが、スハルト大統領が辞任した後、文字どおり骸骨が出始めたわけです。それで軍隊というのは国民の敵だということが非常に自由なマスメディアの報道の中ではっきり印象づけられた、これが一つだと思います。
二番目に、そういう中で、軍が新しい時代でどういう軍隊になるのかということを、うまいイメージを軍人が提起できなかった。ウィラントという人は能吏ですが、そのような長期のビジョンを出さなくて、みんながどうしていいのかわからなくなった。
三番目に、これは渡辺大使がおっしゃったことですけれども、インドネシアの軍隊、これは公務員もそうですけれども、給料だけでは一週間食えません。ですから、そういう中では、例えば軍なら軍で別のメカニズムでお金を作ってきて、これは大体、華僑の政商に仕事をやらせて、そこで上がりをもってきて、それで自分の部下の面倒をみるということが非常に重要なおやじの仕事なわけですけれども、そういうメカニズム自身が経済危機の中で崩壊してしまった。