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ですから、グローバリズムの中でネーション・ステートが存在基盤を失いつつあるというのは各国共通の問題ですね。インドネシアは、どちらかというとグローバリズムにオープンな形の経済政策をやっていましたから、それで荒波を一挙に受けてしまった。その受ける中でネーション・ステートが崩壊する。そういう形で、これはどの国でも起きることですよね。インドネシア特有のことではないですよね。そういう中で、どうやってネーション・ステートをリストアするのかということは非常に難しい問題ですね。その辺に関して、いかがでしょうか。

○モデレーター  白石さんにお答えいただく前に、千野さんと渡辺さんに、今の問題に関連してコメントがあったら、簡単にそれぞれお願いします。渡辺さんどうぞ。

○渡辺  私は答えを大体予測しながら質問しようとしているのですけれども、やはり信頼という問題、国に対する信頼、それから社会においてリーダーに対する信頼、これがある程度重なっている面があると思うのですね。マレー社会、その他では、自分の面倒をみてくれるリーダーに対する信頼が高いのだろうと思うのです。

軍の中での統一というのは、軍の司令官が、面倒をみる人材、あるいは指導者であったという大事な存在であったのだろうと思います。それが、今回の自由化、あるいはマスメディアの自由化によって、軍に対する批判が澎湃として起こって、軍の人たちが今まで絶対の前提としていた、退職後の地方の知事への就任であるとか、大臣の地位を得るというようなプロスペクトがなくなってきた。そういう問題が、軍の指導者にもう一回信頼を寄せて、自分たちの面倒をみてもらおう、これが軍の中における軍中心の考え方の一つであり得るのではないだろうか。

それに対してワヒドが、今、公務員の給与を上げて、軍なり、私物化されたエンティティーの中でベネフィットを期待するのではなくて、国家としての予算の中から十分に面倒みるから、そういうクーデター、その他の手段に頼らないようにする。そのために外国からの援助も得る、こういう方向に今向かいつつあるのではないかという感じがしているので、ちょっと白石先生にその点を聞きたいなと思っているわけです。

○モデレーター  千野さん何かありますか。

○千野  ネーション・ステートが壊れているということに関連して、私はインドネシアがどこへ行くかということは、結論を先にいえば、大幅な自治を与える連邦制というものをワヒド政権が今打ち出せるかどうかわからないのですが、それしかインドネシアのいく道はないのではないかと思います。

 

 

 

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