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ただし、先ほど白石先生、あるいは榊原教授がいわれたように、ASEANというのは決して強固な機構ではない。これに対して支援が外部から与えられなければならない。しかし、支援というのが民族主義が確立した国の論理で与えられてはいけない。そういう意味では、ASEANがAPECの中で一つのエンティティーとして固まって動き出すまで相当時間がかかりました。それは、お互いにこれだけの違う国の民族主義、非常に強固な国に牛耳られてしまう、これがおそらくあったと思います。もちろん、具体的には軍事力の強い国、経済力の強い国、侵略をした経験のある国、こういうのがありますけれども、もっと基本的には、国家の基盤を成す形態、社会形態が違う国々と、途上国世界、第三世界というのは違うというところに我々はもっと思いをいたさなければならないのではないか。そういうところにもっと理解を込めて、お互いにひとり立ちするに当たって、インターディペンデントにやっていかなければならない。

そういう意味では、ワヒド大統領は着任早々、ASEAN各国をすべて回る、あるいは中東に行く、アメリカにもちろん行きます、日本にも。そういう意味で国外の勢力、あるいは国内の諸勢力に及ぼす影響というのは非常に大きいわけです。そういうところをワヒドは非常にうまくやっていると思います。

しかし、我々がこれらの国にこれから援助していく場合に、日本がドミナントするような形での援助、あるいは米国のドミナントを許すような援助、中国が領土的な脅威を増すような形で枠組みを作る、そういうことをなるべく排除しつつ、このASEANという国々が、非常に脆弱性を抱えつつ、地域機構の中でまとまっていくことに対して、理解ある援助を与えていく。そのことによって、日本の経済的、政治的、あるいは他の文化的な意味での利益に帰するのではないかと私は感じます。

先ほど千野さんと話していて―話というのはそういう抽象的な話ではなくて、もっと具体的な話をしなくてはいけない。私はナショナル・カー・プロジェクトで非常に苦しんだり、いろいろな人たちと話した、あるいはワヒドさんと話したなどありますけれども、そういうことを話していると私の与えられた15分がなくなってしまうので、あえて私の不得意な、抽象的なポイントだけを最初のイニシャルリマークとさせていただきました。

 

 

 

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