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それから、ASEANのことなのですが、国連がアジアにおいて効果的に使われるためには、やはり地域機構とのタイアップが絶対に欠かせない。ASEANというものは、私も東南アジアに赴任してつくづく感じたのですが、非常に協調とかASEANの結束であるとか、外交用語としてはすばらしい言葉が並ぶわけなのですが、いざ問題になると、各国の事情や発展段階があまりに違うと思いますし、GDPも大きく違っているわけで、ヨーロッパのEUという形にはとてもいかない。しかしながら、今回の経済危機の大きな教訓の一つは、やはり協調していかなければいけない。それは日本も含めてだと思うのですが、相互依存の深まりということであったと思うのですね。

ですから、ASEANが拡大をしてきて10カ国体制が実現したわけなのですけれども、拡大するあまり、よくいわれるように求心力の衰えつつあったASEANが、もう一度、どのような形で地域の問題を本当に解決することができるか。内政不干渉とか、問題先送りという言葉だけで事態をやり過ごしていくことができないということは、各国自身感じている。しかし、先ほども出ましたように、ASEANの中でもインドシナとインドネシア、あるいはマレーシア、フィリピンといったところでは事情も違う。したがって、ASEANという中でもある種の分化というのも今後あり得るだろうし、それが必ずしもマイナスでない形での分化ということも考えられていくべきではないかと思います。

最後に東ティモールのインドネシアの他州への影響ということなのですが、基本的にはバルカン化とかユーゴスラビア化ということは起こらないと思っていましたけれども、最近は一つの物事が転がり出すと、その意思を超えてマイナスのモメンタムが働き出すと止めることができないという歴史の流れを感じざるを得ないということから、大変懸念される事態が起きつつあるのではないかと思います。ただ、宗教対立といわれているのですけれども、基本的な問題の根元というのは貧困と不公平の問題、宗教というのはそういう形をとっているのであって、本質的にはスハルト時代の不公平と今の経済改革の中でさらに大きくなっている貧困の問題、この二つの問題が分離・独立、あるいは分化現象になっているのではないかと私は思います。以上です。

○モデレーター  ありがとうございました。IMFの役割について極めて批判的であり、また、国連の役割について、最後にASEANの問題に触れられていましたが、また後ほどご議論いただきたいと思います。

四番目は渡辺さんですが、昔タイにも勤務され、最近ではインドネシアの大使をお務めになった立場から、全般的に、今までの3人のお話を踏まえてお話を伺いたいと思います。3人塁に出ておりますから、4番バッターにクリーン・ヒットをお願いしたいと思います。

 

 

 

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