日本財団 図書館


先ほど榊原さんから、あの時点でスハルト政権が崩壊したのは良かったのか悪かったのかというようなお話がございましたけれども、私も何ともいえませんが、少なくともこれだけはいえると思いますのは、IMFは火を消すために入ったわけなのですが、実は火をまき散らす役割をしたのではないかという気がしています。つまり、白石先生がよくお書きになっていらっしゃいますし、私もそう思いますけれども、スハルト体制はいつ終わってもおかしくない、終わらなければいけない、ということさえいえる政権だったと思うのですけれども、最後の一つきというか、一押しが、どこでどういう形であるかというのが経済危機であったし、それに対してIMFが対処の仕方を間違えたというように、新聞記者としてみていますとそういう思いが大変強くいたします。

一例を挙げると、マクロの数字を直すことはしたのだけれども、実際にインドネシアの社会、あるいは人々の暮らしがどのようになされているかという、実体経済に関する配慮がほとんどなかった。したがって、銀行の閉鎖もそうなのですけれども、決定的なのは補助金を打ち切る中での灯油の値上がりですね。これは、やるといわれて随分時間がたって、いつか撤回するのではないかと私などは思っていたのです。

といいますのは、これをやれば必ず暴動は起きるであろう。暴動が起きれば、襲われるのは商店であるとか、つまり華人を主体とする流通機構であろう。華人が襲われれば、華人は逃げ出すであろう。逃げ出せば、資本は逃げるであろう。このように、経済には全く素人の私が考えてもわかり切ったようなことが行われるというのは理解できないけれども、そのように事が進んだというのは、考えようによっては、あるときからIMFは、スハルト政権を崩壊させるお手伝いをするような方向に変わったのかなと推測したくなるぐらいなことでありました。

しかし、スハルト政権があの時点で倒れたことは、歴史的にみれば、終わるべくした政権が終わったという、今は混乱が続いておりますけれども、民主化などの観点からいえば、いずれは訪れることであって仕方がなかったといいますか、どういう表現が適切かちょっとわかりませんけれども、そういう時期にあったのであろうと思います。

政治の方の東ティモールのことなのですが、東ティモールのことで一つ問われなければいけないことは、8月30日に住民投票があったために国連が支援団として入ったわけですが、国連は果たして本当に中立であったのだろうかという問いかけですね。ここのところは問われなければいけないのではないかと思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION