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これでアジアの地域秩序を作る。そこでは常にアメリカがナンバー・ワンであり、日本がナンバー・ツーであるということ。

ところが、現在のアジア経済危機の中で何が起こったかと申しますと、少なくとも1970年代、80年代、90年代と、アジア地域秩序が安定し、経済的に非常に発展した。だから、いろいろな周辺の国がこの地域秩序に入ると、経済的に発展し、やがては政治的にも安定するのではないかと考えて、そこに入っていった。それは、例えばビルマ、ベトナムが入ってきたというのはその例なわけですけれども、こういう、いわば経済が発展し、政治が安定し、その結果、地域秩序そのものが拡大しつつ安定していく、そういううまいメカニズムが一応頓挫して、それどころか、例えばビルマは、何のために自分の国がASEANに入ったかわからなくなってしまった。それだから、インドネシアの場合には落ちこぼれる可能性も出てきた。というのが、おそらくアジア地域秩序、つまり地域のレベルからみたときの、今度のアジア経済危機の意味であり、そこでどうしてインドネシアの危機というのが意味があるのかということのポイントなのだろうと思います。

そこで、時間がなくなってきましたので、多元的な国際的な枠組みについて申し上げますと、まず非常に重要なポイントは、東ティモールの問題は例外的であるということです。東ティモールというのは、そもそも国際法上インドネシアの領土であると承認されておりませんでした。しかも、1998年の1月にハビビ大統領が東ティモールにおける住民投票を承認したときに、これを国連の監視下で行うということで合意しました。このように東ティモールの問題は初めから国際的な枠組みがある中で進行した。だから、それを使って、逆にインドネシアに対するいろいろな形のインターベンションが行われることになった。

では、例えばアチェであるとかアンボンについてそういうことが行われ得るか。行われようがありません。というのは、アチェについても、アンボンについても、他の地域についても、これはすべて、国際法上インドネシア国家の一部だということが認められております。しかも、政治的にも、日本政府も含めて、アメリカ政府も、ASEANの国々も、インドネシアの領土的な統一性ということを承認しております。支持しております。

ということで、アチェについて、インドネシア政府が、政府の決定として軍事作戦をやるということになれば、それはあくまでインドネシア政府の決定ですから、人権問題について、例えばヒューマン・ライト・ウォッチのようなところがいろいろなことをいうかもしれない。けれども、国際的にはおそらく介入の余地などはほとんどないだろう。

 

 

 

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