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ですから、この一連のプロセスの中でそういうことがかなりわかってきた。つまり、資本の流れが非常に自由な、グローバルな社会の中でこれを解決する手段というのは、理論的にいうと二つしかないですね。一つは、資本規制をして、グローバル経済から自分の国を遮断すること。もう一つは、国際的な中央銀行を作ること。あるいは、国際的な中央銀行の役割を果たすメカニズムを作ること。それができないなら、その役割を果たすようなリージョナルなメカニズムを作る。そういうものを作ること。そのどちらかにしかソリューションは実はないわけです。

それがだんだんわかってきた状況で、我々がアジアで何をすべきかということをそろそろリージョナルに考える時期に来ている。これは完全に自由にするか、完全な資本規制をするか、そういう話ではありません。そういう話ではなくて、どういう形でリージョナルな危機に対応できるか。

実は、国際的な中央銀行を作るという問題で一番難しいのは、中心にいる国々の利害と周辺にいる国々の利害とが違うわけです。ですから、そういうメカニズムを作るというインセンティブはアメリカにはあまり強くないです。アジア危機というのは、アメリカにとっての危機ではないです。少なくともアメリカは98年の夏までは、これは対岸の火事だと思っていたわけです。結果として、アメリカの金融機関は危機で利益を得ています。アメリカが本気になったのは、ロシア危機の後にアメリカが危機に巻き込まれる懸念が出てきたときですね。

ですから、明らかにインターナショナル・ポリティクスというのはシンメトリカルではない、アシンメトリカルです。アシンメトリカルなインターナショナル・ポリティクスの中で、一体どういうセカンド・ベストの解決を求めていくか。それが、今、アジアの諸国に求められていることではないかと私は思っております。

まだ話したいことはいろいろありますけれども、15分終わりましたので、後でまた議論に参加させていただきたいと思います。

○モデレーター  ありがとうございました。まだまだたくさんのご意見をお持ちのようですから、後ほどまた聞かせていただきたいと思います。

経済のお話の中でも政治問題が随分たくさん出てきましたので、今度は白石さんにバトンをお渡して、お話いただきたいと思います。

○白石  実は今、榊原さんの話を聞いていまして、あらかじめ準備してきたことをしゃべるのはやめまして、少し違う話を…。

 

 

 

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