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もう一つは、政権は崩壊したのですが、その政権の中で微妙なバランスをとっていたグループのバランスが全部崩れてしまった。今、まさにそういう状況になっているわけですね。イスラムと中国人とか、キリスト教徒とイスラム教徒とか、そういうバランスを崩してしまった。非常にデリケートなバランスが壊れそうではあったのですけれども、それを一挙に壊したということが結果として起こったということであります。

過去のことばかり話していてもしようがありませんけれども、白石さんから話がありますが、私は今のワヒド政権がこの政治的困難を乗り越えてくれたらいいなと。特に問題は国軍との関係だと思いますけれども、これを乗り越えてくれたらいいなと。というのは、ワヒド政権の経済政策は非常にまともだと私は思っております。また、債務処理についても、日本などを含めてこれを部分的に放棄する、リストアするということに合意していますから、これで政治的な問題を乗り越えてくれれば、この政権は経済政策的にはうまくいくのではないか。

この政権がハビビ政権と比べて非常にいいのは、中国人との関係がいいことですね。シンガポールとの関係もいい。あるいは、マレーシアとの関係もいい。東南アジア諸国との関係が非常にいいし、経済政策はまともであるということですが、問題は、今の国軍との関係に象徴されるような、政治問題をどう乗り越えられるか。それをうまくやってくれれば、インドネシア国内のいろいろな形のバランスを戻すことができる。

それからもう一つ、インドネシアだけではなくて、東アジア危機といいますか、国際金融危機で我々が学ばなければならないレッスンは、すべて市場に任せておけば、市場が全部解決してくれるのだという、市場原理主義が失敗した。特に途上国でそれをやるというのはディザストラスであるということが証明された。

それは、インドネシアの現政権はわかっているはずです。むしろ自由主義的な政策をとったところが失敗しているのですね。アンワールさんとマハティールさんの仲はいろいろな解釈ができますけれども、私は、経済政策的にはマハティールさんがとった政策が正しかったと思っています。あそこで一度資本規制をして、グローバル・エコノミーとの遮断をすることによって構造改革を進める、あるいは現実的な政策を進めるということをマレーシアはやったわけですけれども、これは私は正しかったと思います。

 

 

 

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