ですから、あそこでもう少しプラグマティックに、問題をテクニカルに限定して、それでリーズナブルなプログラムを作ればよかったのですけれども、あの最初のフェーズはIMFが致命的な間違いをやる。IMFは次第にそれを直してくるのですね。財政についても最初すごい引き締めをやります。ところが、財政を引き締める必要はなかったのですね。要するにもともと赤字であった国ではありませんから、今の日本の財政などに比べるとよほどいいという状況でしたから、財政を締める必要もないのに締めた。金融も一気に締めた。それで銀行の閉鎖をしたということですから、明らかに第一次IMFプログラムは間違いです。
我々は、これが間違いであるということをさんざんいいましたけれども、これは通じない。1月にもう一度プログラムを作って、これもいろいろな理由があって崩壊しています。このときも、スハルト政権は実行する気がなかったということでありまして、これも崩壊いたします。
やっと4月になって第三次のプログラムができて、これは比較的リーズナブルなものができて、少なくとも財政は緩める。金融については私はまだ不満でした。金融はまだタイトな政策を取り続けました。ただ、金融システム改革、あるいは構造改革についてはかなりリーズナブルなものになって、そのときにはルピアが1万ルピア超えていましたから、要するに、銀行の債権と企業も事実上全部破産状態でしたから、企業の債務をどうするかということに対するプログラムを作り、しかもインドネシアの場合には、インドネシア企業がシンガポールでCPでドル建てでお金を借りていたということが問題でしたから、そこに焦点を絞って、解決策をある程度固めて、4月の合意ができるということでしたけれども、その合意で何とかうまくいくのかなと思っていたところに、5月の暴動が起こる。
インドネシアの危機の経緯を私は若干書かせていただきましたけれども、かいつまんでいうと、そういうことだったのではないか。
ですから、結果としてスハルト政権が崩壊するのですけれども、崩壊したことが良かったか悪かったかという判断が一つあると思います。いずれ崩壊するのだからあそこで、という判断をする人があるかもしれませんけれども、それはちょっと、私はCIAではないので、そういうことを考えながら政策を打つということはあまり好まないというのが一点。