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ところが、結果としてスハルトさんは受けないのですね。マリ・モハマッドとかウィジョヨとかというテクノクラートとだんだん会わなくなる。あのパッケージがでる前後から、私は大蔵大臣と連絡をとっていたのですけれども、どうも大蔵大臣が大統領と会えていないということがだんだんわかってくる。そうすると、大蔵大臣といくらネゴシエーションをしても実は大統領と通じてない。大統領は側近だけで政策をやるという形になっていました。

それで結果として何が起こったかというと、IMFと非常に激しい構造改革なり、ポリシー・パッケージの約束をするのですけれども、大統領側はそれを実行する気がない。実行する気がないということを、詳しいことは申しませんけれども、かなりいろいろな局面で明確に打ち出してくるわけです。いろいろな形で、やめることになっていたファミリープロジェクトを直ちに復活したり、そういうことを次々にやって、IMFとは一応合意はしてお金はもらうけれども、約束を実行するつもりはないということを非常に明確にするわけです。

ですからプログラムは作るけれども、クレディビリティーが全くない。こういう状況になって、大体10月の末から11月、12月にかけてルピアが崩壊するわけです。これは完全に政権のクレディビリティー、あるいはIMFのクレディビリティー、そういうものがなくなるわけです。

しかも、私はIMFのプログラムが間違っていたと思います。あの時点で非常に激しい金融制度改革をやるのですね。銀行を16閉鎖しろと。預金保険機構もないのに、銀行を閉鎖しろなどというのは無茶な話なのです。そんなばかなことをやるなという話だったのですけれども、閉鎖して何が起こったか。これは明らかに金融システムの崩壊が起きる、預金の取りつけが起こる、一挙に金融システムが崩壊してしまうわけです。16の銀行の閉鎖ということが一つの原因です。

その他にも、流通、食料、あるいはガソリン、こういうものに対する補助金を一気に切る。これも無理ですね。ソーシャル・セーフティ・ネットになっているようなものについて補助金を一挙に切るということは―それは、ナショナル・カー・プロジェクトをやめるということはこれまた別問題。あるいは、非常に利権の巣になっていたものをやめるというのも別問題ですけれども、ソーシャル・セーフティ・ネットにかかわるような補助金を全部切ったわけです。これが5月の暴動の、軍の中ですからいろいろな理由がありますけれども、一つの原因ではなかったか。

 

 

 

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