冷戦時代のように、ブロック対立の時代に逆戻りするのではなく、相互尊敬に基づく対等な国家間関係・新秩序の構築が求められるのではないか。
―対日関係―
このような国際関係の中でも、日ロ間は最近3年間、極めて良好な関係を維持している。日本もチェチェン問題やロシア国内の汚職問題を批判してはいるが、現実的な対応で改革を支持しており、ロシア指導部は日本の姿勢を評価している。ロシア国内には、日本が重要なパートナーであるとのコンセンサスがあり、良好な関係を発展させたいと考えている。経済援助・軍事交流などを通じた日ロ関係は、戦後希有な良好関係にあり、平和条約締結に向け大変良い環境にある。領土問題でも、日本漁民の安全操業や元島民の自由訪問を実現させており、領土問題解決には時間がかかるかも知れないが、何らかの合意は近いのではないか。
特に日本では、進展イコール領土問題解決、ととらえられているが、他の分野にも目を向けてほしい。3年前には、日ロ間の政治対話はなかったが、現在では、大統領・首相の相互訪問や外相定期協議、軍事交流・文官定期訪問が実施されており、相互理解が進んでいる。たとえば、ミサイル危機等の際の北朝鮮に対する日本の立場をロシアは支持したし、昨年の不審船事件の際も協力を表明した。松浦駐仏大使のユネスコ事務局長選挙出馬の際にもロシアはこれを支持したし、今般の次期IMF専務理事選出に際しても、榊原前財務官が正式に出馬すれば、支持する予定である。ロシア市民も、対日感情が好転しており、いまでは40%超が日本に好感を抱いている状態にある。
ロシアと日本は互いに軍事的脅威ではなく、イデオロギー対立もない。また、ロシアと日本は北朝鮮を含めアジア太平洋地域の発展に協力できる立場にあり、ロシアは日本経済にとって無限の市場・エネルギー資源の宝庫であり、パートナーたりえる関係にある。誰が新大統領になっても、平和条約交渉・領土問題解決への努力は継続して行くだろう。クラスノヤルスク合意での約束の“20世紀末までに平和条約締結”にはまだ時間があるし、最終解決ができなくても将来に向けた中間的決定を模索する選択肢もある。いずれにせよ停滞・逆戻りはあり得ず、前進あるのみ、と考えている。
エリツィン前大統領の日本訪問の約束は辞任により果たせなくなったが、誰が新大統領に就任しても、今年の日本でのサミット出席に加え、正式訪問するよう準備を進めている。