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―米国の歴史観―

米国に歴史はないと、日本ではしばしばいわれることが多いが、アメリカは移民の歴史観を脈々と受け継いでいるのである。これまで自分たちが積極的に取組んできた近代化への推進が今日の世界の繁栄を導いたのであり、他の国も同様に近代化への歩みを絶え間なく進めていくべきであるとの歴史観が米国にはある。近代史のなかで世界的規模で貿易と投資を中心としたグローバリゼーションを展開してきたことが、世界の一体感を強めることに貢献した、との歴史観をもつに至り、米国は他の国も貿易と投資による相互依存関係を構築することが各国の繁栄に繋がると考えている。この歴史観が、20世紀の始めにプログレッシブ運動となって外国政策にも反映されるようになった。今日の米国では、経済面ではグローバリゼーションを、また、政治面では民主化を、世界的に推し進めていくことが使命であるとの考えが共有されている。こうした歴史観が米国のアジア政策にも反映されており、アジア地域でNGOの活動が活発化することを支持しているのもその現われである。

―将来のアジア政策―

将来の米国によるアジア政策については、基本的にはこれまでの路線を踏襲するものと思われる。グローバリゼーションの流れが不可避のものである以上、各国間の相互依存関係を強め、協力していくことが望ましい。これに反する地域主義的な動きに対して、米国側からの反発は生まれてこよう。必要以上にアジアの特殊性を強調し、アジアがヨーロッパと違うことを主張することは、思想面での米国の反発を生む可能性がある。中国との関係では、知的・思想面での米国とのギャップが今後問題となると考えられるが、中国から多くの学生が米国で学んでおり、こうした米国的な考え方を身につけた中国人が増えることによって米国と中国とが接近する可能性が高いと考えている。日本でも、経済的な相互依存関係だけではなく、米国の歴史観を理解することが今後国際秩序を構築する上でも重要になってくると思われる。

 

 

 

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