BOLEROによる船荷証券は電子的に引渡され、荷渡しの現場には物理的には存在しないので、実際に貨物の引渡しを受ける者が、本当にBOLERO B/Lの下で正当な貨物引渡請求権を有する者の代理人かどうかの確認に特段の注意を払う必要が有ります。
5-1.電子情報化の課題
Q5-1-1:為替手形を電子化する場合、船荷証券と比べて、どのような点が問題になるでしょうか。
1.為替手形を電子化する場合に、船荷証券と比べて理論的に最も異なり、かつシステムの設計ないし構築方法を難しくするのは、船荷証券が、基本的に、1]義務者である発行者=運送人、2]権利者である所持人=荷主・金融機関等という二者間の関係を規律し、ただ後者が輾転流通とともに移転していくというものであるのに対して、
為替手形は、1]発行者=振出人、2]権利者=受取人、3]支払委託を受けた支払人という三者間の関係が成立し、しかも、1]の発行者が第一義的な義務者ではなく(あくまで遡求義務者という二次的な義務者であり)、かといって3]支払人も当然には第一義的な義務者ではない(引受という自らの行為を経て初めてそうなる)という複雑な関係を規律し、その上で2]の者が輾転流通とともに移転していき、さらにその過程における後者(被裏書人)は前者(裏書人)に対し証券上一定の権利行使ができる(遡求権)という「おまけ(?)」までついたものである、というところにあると思われます。
2.理論的には為替手形に比べはるかに簡単な法律関係しか成立しないはずの船荷証券であっても、実際にそれを電子化(電子的にその機能をreplicate)しようとすれば、極めて詳細な約束事を作る必要があります。昨年実用化された(稼動開始した)Bolero B/Lに参加しようとする者は、現在、自らがそれに拘束される旨合意するところの法的な書類として、Bolero International Ltd.とのOperational Service Contract(参加者=Userのランクに応じて4種・47ないし49頁)、Bolero Association Ltd.とのBAL Service Contract(30頁)、そしてBolero Association Ltd.を通じて他の参加者と相互に拘束に合意するBolero Rulebook(21頁)及び付属文書たるOperational Procedures(144頁)という膨大な書類に直面することになります。為替手形ではさらにそれが増えることになります。
ただ、Bolero B/L等、電子式船荷証券を実現する過程で直面しかつクリアされるべき問題には、そもそもEDI一般(別言すれば法的効力をもつ電子メッセージの交換の実現一般)の問題といえるものもかなりあります。しかも、事柄の性質上、電子式船荷証券と電子式為替手形で、参加者のカテゴリーに基本的な差はないはずです。従って、Bolero B/L導入の過程で正にそうされたように、紙の書類の場合の関係者間の法律関係を徹底的に分解し、それと同じことが機能的に実現されるようなシステムを設計・構築していけば、凡そ電子化が不可能とは言えないのではないかと思われます。